2019年11月1日施行の専利法第34条と107条の改正条文におき、特許及び実用新案の分割出願規定が緩和された(本所2019/4/18ニュースをご参照)。改正前の特許の分割出願は、初審審査段階での特許査定書送達後30日以内、または再審査段階での特許査定前に出願する必要があったが、緩和後においては、「初審段階査定後」だけでなく、「再審査段階査定後」でも分割出願が可能となり、また、この二段階の査定後の分割出願期限は何れも3ヶ月に延長された。同時に、実用新案も、出願却下処分前及び設定登録後の何れにおいても3ヶ月以内での分割が可能となった。今回の改正は、より柔軟性を高めるものとなっており、出願人に非常に有利な緩和となった。
同時に、新しく改正された専利法により、分割出願の適用範囲、規範はより周到なものとなっている。今回の改正条文では、特許査定後における分割出願の特許請求の範囲は、原出願の明細書または図面に開示された内容を越えてはならない、と明確に定義すると同時に、特許査定された原出願の請求項に係る発明と「同じ発明」であってはならないと定めている。「同じ発明」である場合は、分割出願は、拒絶されることとなり、仮に特許査定されたとしても、無効審判の事由となり得る(旧法では、施行細則に規範されているのみであり、無効審判の事由としては、明確に定められていなかった)。出願人は、特許戦略に基づく分割の結果が、無に帰することのないよう、上記制限につき、特に留意する必要がある。
また、今回の専利法改正に伴い、知的財産局は、特許分割に関連する審査基準を改訂し、実務において以下の点をより明確化した。
- 前述の「同じ発明」か否かの判断は、分割出願の実体審査にて行う。
- 原出願の特許査定後に提出された分割出願は、原出願の出願人が、特許(登録)料の納付・(登録)査定証の受領を放棄したとしても、分割出願の請求項が、一項でも原出願の特許(登録)査定の請求項と同じ発明に該当する場合は、その分割出願は、拒絶されることとなる
この点は、今回の審査基準改訂においても、議論の多かった部分である。この改訂は、重複特許を避ける趣旨によるものの、最新の基準においては、請求項に係る発明が、一度、原出願(親出願)にて特許査定されると、特許査定後の分割出願(子出願)において、原出願と同じ発明を請求できないことから、出願人は、親出願の特許(登録)証の受領を検討する際に、虻蜂取らずにならぬよう、この点を考慮する必要がある。
- 原出願の「初審段階の特許査定後」、「再審査段階の特許査定後」特許(登録)査定書の送達日から3ヶ月以内に提出された分割出願は、原出願の審査段階で完了した手続きを継続して、初審審査及び再審審査が行われる。実用新案においても、方式審査を経た設定登録後、3ヶ月以内に分割出願した場合、同様に引き続き方式審査が行われる。
最近の知的財産局の外部会議にて明らかにされた統計データから分かるように、2013年の改正専利法により、初審査定登録後30日以内での分割出願が可能となってから、多くの出願人が同制度を効果的に利用しており、この8年間の特許出願における分割出願の比率は、2018年に僅かに下降した以外は、年々顕著に増加している。同統計によると、分割出願の時期と態様については、この6年間、「特許査定後の分割」の占める割合が最も高く、特許分割出願の6割を占めている。今回の特許査定後の分割出願における適用範囲と期限の更なる緩和(再審査段階での特許査定後も適用)により、分割出願が、一層増加することが予想される。
ただし、注意しなければならないのは、台湾では現在、如何なる専利出願(特許・実用新案登録・意匠登録の出願)であっても、「拒絶査定後」の分割出願は許可されていないということである。この制限は、審査における負担に起因している可能性があるが、同外部会議からは、知的財産局が、現在、日本、韓国、中国、米国、欧州等の分割出願における規定に注目し、台湾の規定との類似点と相異点への理解を深めており、「拒絶査定後」の一定期間内に(例えば、30日以内、3ヶ月以内、或いは、放棄、拒絶査定確定前まで)分割出願が可能であることは、国際的な傾向であることにも留意していることがうかがわれた。このため、台湾知的財産局が国際的な潮流を見据え、今後、分割出願の条件を緩和する更なる法の改訂を行う可能性が見込まれる。
同外部会議ではまた、「分割出願は、原出願(親出願)の出願時の明細書、特許請求の範囲、又は図面に開示された範囲を超えてはならない(新規事項の追加の有無)」との規定について比較し、一部の国は、(分割直前の)「原出願」を対比・判断の基準としているが、「出願当初の原出願」を基準としている国もあることが示された。台湾の現時点での実務では、対比判断の基準は(分割直前の)「原出願」に基づくものであるが、対比の方法、手順等の詳細については、特許審査基準により更に詳しく規定されることが待たれる。
以上より、この10年間、台湾専利法における分割出願制度は、全体的に明らかな緩和傾向が見られる。特に、特許と実用新案においては、国際的な特許実務に合わせ、出願人のより活発で、柔軟性に富んだ知財戦略の展開を可能とすべく、各界並びに立法者が、法の改正を推進しており、出願人の更なる活用が期待される。
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