SAINT ISLAND INTELLECTUAL PROPERTY GROUP

ニュースレター

台湾におけるAI関連出願と審査実務の探究

 台湾知的財産局は、2019年10月にAI(Artificial Intelligence、人工知能)関連出願概況と審査実務の分析レポートを公表した。

    出願概況では、技術面・機能応用面・応用分野面の3点についてそれぞれ統計分析を行っている。

    技術面で最も多かったのは「ニューラルネットワーク(neural network、神経網)の応用とニューラルネットワークをコアに使用する技術手段」であり、機能応用面では、「コンピューター・ビジョン」と「予測分析」が多く、応用分野面においては「生命医科学」及び「工業と製造業」が比較的多かった。

この統計結果は、台湾におけるAI関連出願の分布と産業発展の特性が密接につながっていることを表している。

 審査実務においては、ニューラルネットワークのコア技術が数理モデル・演算法・ソフトウェア等の抽象的概念に関連するため、特許を受けようとする発明が技術性を有するか否か、並びに課題を解決する手段が技術分野の技術手段に関わるかどうかが、審査のポイントの一つとなっている。

    判断基準は、次の通りである。

(1)もし、特許を受けようとする発明が抽象的概念のみからなるときは、特許適格性に合致しない。

(2)もし、特許を受けようとする発明が、抽象的概念にその他の非抽象的概念の技術が加えられてなる場合、得られた結果が技術エレメントから生まれ、その技術エレメントとその他の技術エレメントで協同してなされたのかを判断しなければならず、これにより発明全体が特定の技術目的の実際的な応用であると判断されれば、専利適合性に合致している。

(3)さらに、発明全体が特定の技術を実現するものであると判断されれば、特許適格性に合致している。

 例を挙げると、予測分析に関する発明において、それが請求する内容がただ一般的なニューラルネットワークユニットを利用し、履歴データを入力して学習させて出来上がったモデルにより予測するものであるとする。メモリとプロセッサからなる一般的なニューラルネットワークユニットは、ニューラルネットワーク分野における固有の能力であり、データ読み取り手段・入出力手段等のエレメントから生まれる効果は、一般的なコンピュータの固有能力である。この為、発明全体が特定の技術問題を解決するわけではなく、“コンピュータの簡単な利用”にカテゴライズされ、特許適格性に合致しない。しかし、生み出された予測データを、さらにその他の技術エレメントと協同で作動させ、発明全体を特定の技術目的を持つ特定の応用にさせれば、特許適格性に合致する。あるいは、そのプロセッサが一般的なニューラルネットワークユニットではなく、特定のニューラルネットワークに用いられるものであり、ニューラルネットワークに対して設計を行う特定のプロセッサであれば、発明全体が特定の技術を実現させることができ、特許適格性に合致する。

 また、明細書がその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているか否かも、審査のポイントの一つである。

 審査実務において、明細書の内容が複雑過ぎたり不明瞭過ぎたりすることで理解しづらかったり、或いは簡潔に記載し過ぎてそれに基づき実現できないといった問題が生じていると、上記のレポートでも触れられている。明細書において、技術面の実施手段を詳細に記載することができれば、開示の十分性要件に違反することを避けられるのみならず、さらに技術性を有することを認めさせて特許適格性の要件に合致させる助けにもなる。

 新規性及び進歩性の審査に関し、特許請求の範囲と明細書のいずれにも、ニューラルネットワーク内のアルゴリズムが記載されていない場合や、どのような数理的手法を用いるかが簡単に列挙されているのみであるとき、そのニューラルネットワークは明らかに発明者による貢献があったわけではない。もし発明者が当座の深層学習ツールを応用して何らかのデータを生み、何らかの処理に用いたとき、これらの処理そのものはすでに先行技術に開示されているため、旧式の論理演算で、数学的演算を簡単にニューラルネットワークの深層学習に変更したに過ぎず、進歩性を有しないと判定される。

 人工知能という波が全世界を席捲している。

 特許の出願数が迅速な伸びを見せているのは、台湾も例外でない。

 上記のAI特許の審査で直面するであろう拒絶理由の探究が、台湾でのAI特許出願の参考になることを願ってやまない。

-----------------------------------------------------------------------
本ウェブサイトのご利用に当たって、各コンテンツは具体的事項に対する法的アドバイスの提供を目的としたものではありませんことをご了承下さい。

Back