台湾は一出願多区分の商標出願を認めており、出願人が商標を二区分以上の商品又は役務に使用する場合、一出願多区分で出願すれば、商標管理のコストを抑えることができる。
しかし商標は、識別力があるか否か、指定商品又は役務の性質・品質・成分・産地等の記述的用語であるか否かについて、指定する商品又は役務によって異なる判断が下されるものである。
これについて、2019年12月に最高行政裁判所が下した判決で、詳しく説明している。
Apple社は2015年に商標「SAN FRANCISCO 」を出願し、第9類「コンピュータソフトウェア,ダウンロード可能なフォント」と、第16類「活字,活版印刷用活字,活版印刷用活字母型」を指定使用するとした。
台湾知的財産局は、審査を経て次のような見解を示し、拒絶査定を下した。
「『SAN FRANCISCO』はサンフランシスコの意であり、…数多くのインターネット企業の所在地として有名であり、…『SAN FRANCISCO』を上記の指定商品に使用することは、商品の産地又は関連特性の説明に当たり、商品の関連需要者に商品を表す標識であると認識させ、それをもって他人の商品と区別させるに至らない。また、出願人が提出した使用証拠は、セカンダリーミーニングを獲得できたことを証明できない。」
出願人はその後訴願、行政訴訟を提起したが、訴願委員会と知的財産裁判所は知的財産局の審決を維持し、拒絶査定を覆すことができなかった。そして最終的に最高行政裁判所に上訴した。
最高行政裁判所は、審理を経て、次のように判示した。
「商標『SAN FRANCISCO』は、確かに第9類『コンピュータソフトウェア,ダウンロード可能なフォント』という指定商品の説明に当たり、先天的識別力を備えていない。また、出願人はその商標がセカンダリーミーニングを獲得できたと証明することもできなかった。したがって、登録を受けることができない。
しかし、商標『SAN FRANCISCO』と第16類『活字,活版印刷用活字,活版印刷用活字母型』は何らの関連性もなく、『SAN FRANCISCO』が需要者に活字、活版印刷用活字、活版印刷用活字母型の製造・生産・設計又は関連サービスの商業の源又はサービス提供地であると印象付けることもない。
したがって、商標『SAN FRANCISCO』を『活字,活版印刷用活字,活版印刷用活字母型』等の商品に用いることは、地名の任意使用に当たり、先天的識別力を備える。
また、商標出願の査定は全体に対して行うものであり、一部のみを拒絶することができない。」
最高裁判所はさらに、もしも一出願多区分の商標出願において、商標が指定使用する一部の区分又は商品に顕著性が無い場合、出願人はそれらの商品・区分を削除したり、分割出願をしたりすることで、識別力のある商品や区分の登録を受けることができると述べている。
一出願多区分の商標出願の識別力を判断するとき、指定商品又は役務の違いにより異なる結果をもたらすことが想定される。もしも商標が指定使用する一部の商品又は役務に識別力があり、その他の区分の商品又は役務に識別力がない場合、出願人は分割出願や指定商品の削除を検討して、識別力がある商品又は区分について登録を受けることを検討すべきである。