従前の「登録商標使用上の注意事項」が2012年に適用されて以降、知的財産裁判所及び最高行政裁判所において商標の使用に関する判例が相当程度蓄積されていることに鑑み、今般、知的財産局(以下「知財局」という。)は、その改訂を発表し、2019年8月23日付で適用した。以下、簡単に各改訂事項のポイントを述べる。
1 商標図案の色を変更した際の同一性の認定
商標の色の変更について、仮にある登録商標が単一の有彩色で構成される文字商標であるとして、実際に使用する際は黒色又は複数の色の組合せである場合、識別機能上全く異なるところがないため、登録商標と実際に使用した商標は同一性を備えるとみなしてよい。
2 商標を実際に使用する際にその他の商標又は標識と併せて使用する場合
別々に登録された「文字」商標及び「図形」商標について、実際に使用する際は「文字+図形」の態様である場合、双方の商標についてそれぞれ独立して使用しているとみなしてよい。また、別々に登録された「文字」商標及び「文字+図形」商標について、実際に使用する際は「文字+図形」の態様である場合、文字部分に同一性があるため、当該使用は「文字」商標の使用証拠とすることができる。
3 商標を実際に使用する際に登録商標の図案より一部を加減する場合
もし、実際に商標を使用する際、登録された図案上に、更に商品若しくは役務の名称、説明文字、簡単な記号(例えば感嘆符など)又は簡単な飾り罫線等を加える場合、登録商標の使用であるとみなしてよい。しかし、もし商標文字と前後につなぎ合わせられた文字が異なる意義を持つときは、たとえ商標の右上に「®」記号を附したとしても、この実際上の使用は商標の使用であるとはみなされない。
もし、商標を実際に使用する際、登録商標の図案より文字又は図形を減ずる場合、たとえ当該文字又は図形についてディスクレームをしていたとしても、需要者が受け取る商業上の印象が異なり登録商標と同一性がないと捉えられる可能性があるため、この実際上の使用は商標の使用ではないとみなされる。しかしながら、減じた部分が、商品又は役務の名称に過ぎず、かつ登録された図案上顕著でない場合、例外的に登録商標との間で同一を有するとみなされる可能性はある。
4 使用された商品又は役務の範囲にかかる判断の厳格化
3年間不使用による取消審判について、商標権者が商品又は役務に対する商標の使用証拠をもって抗弁する際、ある商品又は役務についての使用証拠を提出すれば、原則的に「同じ性質」の商品又は役務についても使用証拠を提出したものとされ、逐一提出する必要はない。しかし、その範囲は取引習慣上一般大衆が同じ商品又は役務であると認識しているものに限られ、この基準と混同誤認の虞の有無を判断する際の類似商品又は役務の審査基準とは異なる。具体的に言うと、もし指定商品が上位概念(例えば化粧品)であり、実際に使用する商品が当該概念の範囲内の具体的商品(例えば口紅)である場合、上位概念の商品(化粧品)を使用したとみなすことができる。しかし、もし指定商品が人体用薬品であり、実際にはサプリメントを使用した場合、両者の間には類似関係があるとはいえるが、上位下位の関係にあるとは言い難いため、サプリメントに対する商標の使用証拠をもって、人体用薬品の使用証拠に代えることはできない。
このほか、単なるおまけに商標を附して使用する場合(例えば、配布用宣伝ポケットティッシュの上に商標を附す場合)、商標をおまけに使用したとみなすことはできないが(すなわち「ポケットティッシュ」に商標を使用したとはいえない。)、例えば一定金額以上の消費をした者や一定のポイントを集めた者に対し商標を附した商品を贈呈する場合など、条件を付して贈呈するのであれば、当該商品に対する商標の使用に当たる。
5 インターネット上で使用する商標の「真実の使用」
インターネット上での商標の使用をもって、登録商標の使用証拠とする場合、商標権者は主観上、台湾の市場においてマーケティングする目的を有していなければならない。E-ビジネスの発達に鑑み、商標権者が3年間不使用による取消審判においてインターネット上の証拠資料をもとに抗弁する事例がますます多くなっている。これら「インターネット上の使用」行為に対して、商標使用は「真実の使用」でなければならないとする判断原則が追加された。一般的に、商標権者は、ウェブサイトのスクリーンショット、インターネット上の取引記録、顧客とのやり取りの記録、オンライン上の広告資料、インターネットメディアのニュース、電子インボイス、インターネットプラットフォーム業者と締結した契約書等の証拠資料を提出することができる。もし国外のウェブサイトにおいて商標を使用する場合、当該ウェブサイトによる商行為が台湾に及ぶ場合に限り(例えば、取引相手が台湾に位置する、商標又は役務の提供地が台湾であるなど)、台湾における商標の使用であるとみなすことができる。
6 商標使用資料の商取引習慣への合致
商標権者は商取引の過程で得た取引文書を台湾において商標使用行為を行なった証拠として提出することができる。また、新聞に掲載された広告を使用証拠とする際、その掲載内容、掲載記事そのもの等の要素によって、消費者を引きつけ、マーケティング目的を達成しているか否かを判断した上、さらに商標の使用を構成するかを判断しなければならない。
この度の改訂により、商取引過程における使用の認定、及び商標使用の同一性の判断がより明確になり、また、使用された商品又は役務の範囲の判断が厳格化した。商標権者は登録商標の使用に関しより一層の注意を払うべきであるが、特に実際に使用する商品又は役務が登録内容と合致しないことにより、登録商標が取消しのリスクにさらされることは避けるべきである。