台湾での商業活動において専利権の脅威に直面したとき、専利権の効力に対抗することは、効果的な反撃手段としてよく採用されている。これは実用新案の場合、さらに重要性を増してくる。現行専利法の規定により、同法の専利の定義に合致し、かつ専利を受けることができない事由又は物品に当てはまらない創作は、専利を受けることができる。しかし、その創作が出願前に刊行物に記載されたものや、出願前に公然実施されているもの、或いは出願前に公然知られたものは、専利を受けることができない。ここでいう「実施」とは、製造・販売の申出・販売・使用又は上記目的による輸入等の行為を指す。そして、「公然実施」とは、上記の行為により技術内容が開示され、該技術が公衆に知られた状態にすることを指し、公衆が実際に実施し、又は本当に該技術(技芸)の内容を知っている必要はない。
近頃、「多機能スポーツインナーの改良構造」という実用新案の無効審判請求において、裁判所所属の民間公証人の公証を経た公開日が係争専利の出願日以前であるスポーツインナー商品に関するブログ文章・YouTube動画(以下、証拠2という。)と、ブランドタグが付されたスポーツインナーの実物サンプル(以下、証拠3という。)が提出された。そして、無効審判請求人は、当該ウェブサイトで紹介されているスポーツインナーと実物サンプルが同一の商品であり、当該ウェブサイトの証拠と実物サンプルに基づき、係争専利が新規性を有しないと主張した。
知的財産局と訴願委員会は、当該ウェブサイトの証拠の公開日が係争専利の出願日よりも前であり、当該ウェブサイトの証拠と実物サンプルのブランドが同じで、外観の色や特徴及び構造が一致することから、両者には互いに関わりがあり、比較した結果係争専利の技術内容は既にこれらの証拠に開示されており、係争専利が出願前に公然実施されていたことを証明できるので、新規性を有しないと認めた。
専利権者はこれを不服とし、知的財産裁判所に上訴した。そして、知的財産裁判所は、次のように知的財産局及び訴願委員会とは異なる見解を示した。
証拠3は実物サンプルであり、証拠2は商品の外観を示す写真・動画に過ぎず、商品の内部構造をアナライズしていない。両者はブランドと外観設計が同じであると言えるものの、「構造が一致するか」については、根拠が無い単なる推論である。証拠3を係争専利が新規性を有しない証拠とすることができるかを判断する際、証拠2と証拠3の「構造が一致するか」の比較に、係争専利の請求項の構造部分に関する構成が明らかにカギであり、重要になってくる。係争専利の請求項1における構造関連の構成を抜き出すと、「一体成型の2層ニット生地」・「伸縮弾性が比較的少ない内層衣」・「伸縮弾性が比較的大きい内層衣」・「弾性が無い三角生地」等が挙げられる。そうすると証拠2と証拠3は、これらの構成について「構造が一致するか」を根本的に比較できないことが分かる。
上記により、知的財産裁判所は原処分及び訴願決定における証拠3が証拠2のウェブページ・文章及び動画で挙げられたインナーの実物であるという認定を採用せず、証拠3の実施日は証拠2を証左とすることができないとした。しかも、証拠3は無効審判請求人が審判を請求した後に提出したものであり、証拠3の購買証明書類を何も提出することができなかった。この為、係争専利の出願前に証拠3が存在していたとは認定できず、証拠3及び証拠2・3の組合せは、自ずと係争専利の請求項が新規性を有しない旨を証明することができないとして、知的財産局の処分と訴願委員会の訴願決定は取り消された。
無効審判の実務において、係争専利が出願前に公然実施されていた事実を証明するため、審判請求人はしばしば実物サンプルを証拠として採用している。しかし、実物サンプルには一般的に日付や日付関連の注記や記号が表示されていないことから、その他の補助的な証拠(購買レシート・輸出申告書・人的証拠等)により該サンプルが係争専利の出願日(又は優先日)よりも前に確実に存在し、公開又は市場に流通していた事実を証明しなければならない。
補助的証拠と実物サンプルの間の関わりの深さが、知的財産局又は裁判所に受け入れられるかどうかの勝敗を左右するポイントとなる。特許と実用新案の改良の構成は、内部構造に含まれる可能性があり、それと比べると設計専利は物品及び外観が同一又は近似であればよく、構造が一致するかどうかにかかわらない。補助的証拠と実物サンプルの内部構造における関連性が明らかに重要となってきていることから、将来的に専利権の効力に対抗しようとする場合において、類似の証拠を組み合わせて用いる際には、特に留意する価値があると言えよう。
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