専利法の施行細則には、複数の技術的特徴が組み合わされてなる発明について、その請求項の技術的特徴は、「手段(工程)機能用語」を以って記載(以下「機能的クレーム」ともいう。)することができる旨が規定されている。このような手段機能用語を解釈する際は、発明の詳細な説明の欄に記載された、その機能に対応する構造、材料、又は動作、及びこれらと均等の範囲を含むように解釈するものとする。
知的財産裁判所2016(105)年度行専訴字第99号専利無効審判の行政判決書において、知的財産裁判所は、機能的クレームの実務上における重要な問題について提言した。
知的財産裁判所は、訴訟係属中における請求項の訂正と、機能的クレームの解釈と、明細書に記載した実施例との関連性について言及すると共に、設定登録時に手段機能用語を用いて特定されていたクレームを、手段機能用語を用いずに特定するよう訂正した場合における取り扱いについて言及した。この事件は、最高行政裁判所に上告され、最高行政裁判所の審理を経て2018(107)年末に判決が下され確定した。
一、事案の概要
係争対象となった専利には2回の無効審判が請求され、この2回の無効審判はいずれもその審決を不服として訴願が提起されたが、棄却され、その後、審決取消訴訟が知的財産裁判所に提起され、事件は知的財産裁判所で審理され判決が下された。
第1回目の無効審判の審決に対する訴えが知的財産裁判所に提起された際は、知的財産裁判所は無効審判の請求は成り立たない旨の判決を下した。また、知的財産裁判所はその判決の理由において、係争対象となった専利の請求項における「即時停止ユニット」は、電源の供給が行われなくなったときに、「制御信号を生成し、該ステータの磁極の二つの端子の電位を等しくすることにより、該ファンシステムを即時停止させる」機能を達成し得るものに過ぎず、当該機能を奏する全ての構造については特定されていないので、「即時停止ユニット」は手段機能用語であると判断することができ、係争対象となった専利の実施例における「即時停止ユニット」の電気回路に限って解釈するべきとの考えを示した。
然るに、無効審判の証拠には、係争対象となった専利の「該ステータの磁極の二つの端子の電位を等しくする」旨が記載されていなかったので、知的財産裁判所は、第1回目の無効審判の請求は理由がなく、請求を棄却すべき旨の判決を下した。
第1回目の係争対象となった専利に対する判決が確定した後、第2回目の無効審判が請求され、知的財産局の審理期間中に、専利権者は請求項を訂正したが、独立項における「即時停止ユニット」の意味内容は変動していなかった。
知的財産局は、第1回目の判決の「即時停止ユニット」は、手段機能用語であるとの見解を以って、係争対象となった専利の実施例における「即時停止ユニット」の電気回路は、請求項における「即時停止ユニット」、すなわち、2個のスイッチと、1個の蓄電器と、1個の抵抗器を含み、該蓄電器は該抵抗器と並列接続によって電気的に接続されているものを意味する、との解釈を示した。
また、知的財産局は、証拠となった蓄電器と抵抗器は「直列接続」によって電気的に接続されているに過ず、係争対象となった専利の「即時停止ユニット」における「蓄電器は該抵抗器と並列接続によって電気的に接続されている」ものとは異なることを理由として、無効審判の請求は成り立たない旨の棄却審決をした。
二、知的財産裁判所の見解
係争対象となった専利に対する第2回目の無効審判の審判請求人は知的財産局による上述の審決を不服として訴願し、訴願の決定を経て知的財産裁判所に対して審決取消訴訟を提起した。
審決取消訴訟が知的財産裁判所に係属中に、専利権者は口頭弁論の前に知的財産局に訂正請求を行った。この訂正請求の内容は、手段機能用語によって専利発明の内容が特定されていた即時停止ユニットに関し、「当該即時停止ユニットは、2個のスイッチと、1個の蓄電器と、1個の抵抗器とを備え、且つ該蓄電器は該抵抗器と『電気的に接続される』」と訂正するものであった。
知的財産裁判所は、訂正後の請求項に基づいて訂正後の請求項に係る専利発明がなおも専利要件を満たすか否か判断することとし、更に、主要な争点は、訂正後の該蓄電器は該抵抗器と電気的に接続されるとの発明特定事項の解釈が、手段機能用語における解釈の方法と同様に、蓄電器が該抵抗器と並列に接続される場合に限られるか否かにあると判断した。
ここで、知的財産裁判所は、手段機能用語を用いたクレームの解釈は、明細書で記載された「該機能を達成」し得る構造、材料(或いは動作)に加え、これらと均等の範囲をも含むべきと指摘した。
また、知的財産裁判所は、係争対象とされた専利に関し、即時停止ユニットの機能を達成するための構造には、2個のスイッチと、1個の蓄電器が含まれるが、抵抗器は含まれないと判断した。なぜなら、抵抗器は、蓄電器に蓄電された電力を速やかに放電させることができるに過ぎないからである。このため、技術的範囲の解釈に当たって抵抗器があるかどうかは問わないとし、知的財産局の即時停止ユニットに対する原審決は失当であるとの見解を述べた。
更に、専利権者が訂正をした後の請求項には、当該機能を発揮し得る全ての構造及び動作の関係が具体的に記載されているので、訂正後の請求項には、手段機能用語を用いて特定されたクレームの判断基準を適用すべきではなく、訂正後の専利請求の範囲は、請求項に記載された文言を基準として判断するとの原則通りに解釈すべきであり、明細書に記載された技術的特徴を請求項に係る発明の解釈に適用して、請求項の範囲を不当に狭く解釈してはならない旨を述べた。
その後、訂正後の請求項に記載された文言を基準に、証拠により係争対象となった専利は進歩性を具備せず無効であると認定された。なお、この事案は最高行政裁判所に上告されたが、最終的には原審が維持される判決が確定した。
上述した裁判所の判決からは請求項において手段機能用語を以って技術的特徴を限定した場合には、解釈にあたっては、実施例レベルの各構成要素の機能を考慮した上で、どの構成要素がどの機能を奏するための構造に対応するのかを決定することが必要であり、機能を考慮せずに実施例に記載された全ての構成要素を請求項の解釈に用いてはならないことを窺い知ることができる。
また、裁判所の判決からは、設定登録時に手段機能用語を用いて記載された請求項について、明細書で具体的に記載されたその機能を奏し得る構成を以って訂正された場合には、原則的な請求項の解釈方法に立ち戻り、記載された文言を基準としてその意味を解釈せねばならず、手段機能用語を用いて請求項を記載した際の判断基準を適用してはならないことも窺い知ることができる。