専利出願の審査と無効審判、ひいては専利訴訟において、複数の引例の組み合わせで専利の進歩性を否定できるかどうかがしばしば争点となる。そして、この争点に内在する中核的な問題は、専利出願時に当業者が複数の引例を組み合わせてその専利の技術を完成させる「合理的な動機付け」があるかどうかということである。
この問題に関し、台湾の知的財産局は、2017年に公布・施行された現行の進歩性審査基準(以下、「審査基準」という)で、「合理的な動機付け」の要件について詳しく規定している。審査官が「合理的な動機付け」があるかどうかを考慮する際、複数の引例の技術的内容に対し、(1)技術分野に関連性があるかどうか、(2)解決しようとする課題に共通性があるかどうか、(3)機能及び作用に共通性があるかどうか、(4)組み合わせが明確に記載され、又はその教示・提案が実質的に暗示されているかどうか、の四つの要件に基づいて総合的な判断を行わなければならないということになっている。
上記の四つの要件が具体的な案件に適用される場合、どのような原則があるか、また、四つの要件が互いにどのような関係を有するかは、出願人、専利権者及び知財実務者が共に関心を寄せる焦点となっている。これについて、台湾の最高行政裁判所は、最近の発明専利(特許)の無効審判に関する案件(案件番号:107年度判字第647号)の終局判決で明確に説明しているので、以下では当判決の重要なポイントを紹介する。
- 「機能及び作用に共通性があるかどうか」については、「全体的構造」を考慮すべきであり、「共通の構造」のみを考慮してはならない。
この案件における争いの対象となる専利(以下、本件専利という)は、扇風機とその製造方法の発明であり、独立項が三つあり、主要な技術的特徴が扇風機の回転軸と金属カバーの結合方式の改良にある。そして、無効審判において引例として用いられた証拠は五つあり、証拠一が「主軸電動機」に係るものであることを除き、他の主要な引例、即ち証拠二、三、五はいずれも扇風機関連の技術分野に属するものである。
この案件の原審(一審)に当たる台湾の知的財産裁判所は、証拠一と証拠二、又は証拠一と証拠三の組み合わせは「合理的な動機付け」の要件を満たすと判断し、その主たる理由は、「証拠一と証拠二、又は証拠一と証拠三はその機能と作用に共通性がある」とした。かいつまんで言えば、証拠一も証拠二も回転子と固定子の構造を備え、両者はいずれも主軸、並びに主軸に取り付けられるものを回転させることができるとされている。そして、証拠一と証拠三はいずれも電動機の原理に基づいて主軸に取り付けられるもの、又はインペラーを回転させるものであるとされている。
しかし、最高行政裁判所は、「機能及び作用に共通性があるかどうか」の判断に関し、「共通の構造(本件において即ちモーター構造)」の機能及び作用のみを考慮してはならず、「全体的構造」の機能及び作用を考慮しなければならないと指摘した。最高行政裁判所によると、証拠一が「ハードディスク装置、光ディスク装置、光磁気ディスク装置、磁気ディスク装置等に取り付けられる主軸電動機」であることに対し、証拠二と証拠三は「扇風機」であるため、証拠一と証拠二・証拠三は異なる電気機器である。したがって、証拠一も証拠二・証拠三もモーター構造を備えることを理由に全体的構造の設計と製造方法上の相違を無視してはならないほか、異なる電気機器が達成しようとする機能も異なるという点も看過してはならないとした。
また、専利権者は原審で、証拠一と証拠二が解決しようとする課題がそれぞれ「構造と取り付けが簡単で、耐衝撃性に優れて軸受の寿命を延長できる主軸電動機を提供すること」と「モーターの熱放散の問題を改善すること」と異なるため、それらを組み合わせる動機付けがないと主張しているが、知的財産裁判所は原審判決においてこの進歩性の判断に影響を与えられる主張の当否を論じていない。最高行政裁判所はその判決でこの原審判決の理由不備をも指摘した。
- 「解決しようとする課題に共通性があるかどうか」について、関連性だけがあればよいわけではなく、解決しようとする課題が実質的に同一でなければならない。
知的財産裁判所の判断では、「証拠五と証拠二、証拠三はいずれも扇風機の技術分野に属し、証拠五と証拠一はそれぞれ解決しようとする課題に関連性があるため、それらを組み合わせる動機付けがある」とされている。これに対し、最高行政裁判所は審査基準を引用し、複数の引例が解決しようとする課題に関連性があるかどうかは、「合理的な動機付け」があるかどうかを判断する合理的な基準ではなく、複数の引例が解決しようとする課題が実質的に同一であって初めて「合理的な動機付け」の要件を満たせると指摘している。
上記のように、最高行政裁判所はその判決を通じて現行の審査基準における「合理的な動機付け」の要件に関する判断基準を示している。この判断基準は、審査官又は無効審判の請求人に、専利出願の審査と無効審判、ひいては専利訴訟において専利の進歩性を否定することをより一層困難にしている。この動向は台湾の知的財産権実務に関心がある方々にとって、注意に値すると思われる。
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