「三国志」は、後漢末期から西晋が三国を統一するまで(西暦184年から220年)を記した中国歴史書である。「三国志」に記載の歴史は、中国や日本で広く知られており、この歴史物語をテーマにした演劇・漫画・アニメ・コンピュータゲームは枚挙に暇がなく、多くの消費者の人気を集めている。
株式会社コーエーテクモゲームスは、著名なコンピュータゲーム製作会社であり、かつて1985年に「三国志」の歴史物語をモチーフにして「三國志」という名称でゲームソフトを開発した。そして、台湾において「三國志」を第9類「コンピュータゲームプログラムを記憶させた光ディスク又はゲームカセット」、第28類「テレビ又はコンピュータと連動しない電子ゲーム機」、第41類「インターネットにより配信されるオンラインゲームの提供」等を指定して商標登録出願を行い、2003年に商標登録を受けた。
その後、2014年に9Splay Entertainment Technology Co., Ltd(以下「被告」という。)が、同様に「三国志」の歴史物語をモチーフにして開発したコンピュータゲーム「三國志一統天下」を配信した。これにより商標「三國志」の専用使用権者であるKoei Tecmo Taiwan Co., Ltd. (以下「原告」という。)が、2016年に被告に対し権利侵害に関する民事訴訟を提起し、著作権侵害の停止を求めたほか、被告がコンピュータゲームの宣伝に用いた「三國志一統天下」と登録商標「三國志」が近似で、商標権の侵害に当たると主張した。
この商標権侵害の争点について、台湾知的財産裁判所は審理を経た結果、商標権侵害を構成していないと認める判決を下した 。
その主な理由は、下記のとおりである。
1.知的財産局発行の「商標識別性審査基準」の規定によると、公知の小説又は物語を商標として、某商品又は役務(例えば、電子ゲームカセット・磁気ディスク・光ディスク、又はオンラインゲームサービス等)を指定使用する場合、通常、消費者は指定商品又は役務の内容の説明であると認めるため、識別力を有しない。係争商標「三國志」は歴史書の名称であり、識別力を有さず、登録を受けるべきではないため、原告がこの登録商標に基づいて訴訟を提起できるかどうかには、疑問を抱かないわけにいかない。
2.商標法第36条の規定によると、商取引慣習に合致する信義誠実の方法により、自己の氏名、名称、又はその商品若しくは役務の名称、形状、品質、性質、特性、用途、産地又はその他の関連商品若しくは役務自体の説明を表示するもので、商標としては使用していないものは、他人の商標権の効力による拘束を受けない。
被告が使用するゲーム名「三國志一統天下」を見ると、特に「三國志」の3文字を目立たせているわけではなく、登録商標マーク®を標示しているわけでもない。被告の「三國志一統天下」というコンピュータゲームを消費者は三国時代の歴史人物をシミュレーションさせるゲームであると認知するため、記述的な使用に他ならず、商標を使用する意図があったわけではなく、商標法における「使用」を構成しない。
本件からは、公知の作品名により商標登録を受けたとしても、商標権者が権利を行使しようとする場合に、ある程度の制限を受けることが分かる。第三者が作品名を一般的使用の形で商品又は役務の表現に用いる場合、商標権者は干渉せずに受け入れざるを得ないと言えよう。
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