台湾において、専利権侵害の判断はオール・エレメント・ルールに基づくものであり、即ち原則的には、被疑侵害品が専利請求の範囲に記載された全ての要件を備える場合でなければ、専利権侵害が成立すると認定されない。一方、他人に提案(教唆)したり、幇助したりすることで「共同」で専利請求の範囲に記載された全ての要件を満たす行為について、現行の台湾専利法に「間接侵害」の責任に関する規定がなく、実務上決まった基準が欠如している。これに対し、知的財産裁判所の最近の106(2017)年度の民専訴字第50号案件の判決は、この類型の案件についてより明確な見解を示している。
上記案件の原告は、台湾第I329733号「エコな爆竹点火・爆発装置。」専利(中国語名:環保礼炮。以下、本件専利という)の専利権者であり、この案件の被告が原告の許諾を得ずに本件専利を侵害する製品(以下、被疑製品という)を生産し、インターネットを通じて販売したと主張した。
なお、知的財産裁判所の解析によると、本件専利の請求項1の要件は下記のとおりである。
(A)管身の内部に管孔が備えられ、管孔の底部に点火室が設けられる、所定の長さに延伸する少なくとも一つの砲管
(B)点火室に設けられる点火部材、及び該点火部材に点火動作を行わせることができる供電機構を備える点火ユニット
(C)ガス源、及びガス源につながり、該点火室にもつながるガス注入端を備えるガス注入ユニット、及び
(D)スイッチ、該スイッチに電気的に連結し該ガス注入ユニットから点火室へガスを注入する時間を制御するガスタイマー、及び該点火ユニットの点火時間を制御する点火タイマーを備える制御ユニット
一方、被告は、被疑製品に(A)の砲管、管身、管孔等があるものの、供電機構、ガス源、タイマーがないので、オール・エレメント・ルールに基づけば、専利権侵害が成立しないと主張した。これについて、知的財産裁判所は、下記の見解を示した。
- 原告が提出した被疑製品のマニュアルに下記の内容がある。
(1)被疑商品は二つの気体を注入することができ、一つは酸素であり、もう一つはガスである。
(2)被疑商品は12ボルトの直流電源を使用する。
(3)被疑製品のリモコンに「連続煙火」、「三発礼砲」、「長間隔煙火」、「短間隔煙火」等の選択項目がある。
- 上記の(3)から、被疑商品にはたとえタイマーがなくとも、目的、手段、機能上、タイマーに相当する装置があるはずである。さもなければ、(3)の「連続煙火」、「三発礼砲」、「長間隔煙火」、「短間隔煙火」のそれぞれ間隔が異なる爆発モードを実行することができない。そのため、被疑製品は文言上本件専利の請求項1の要件(D)を満たさないかもしれないが、均等侵害が成立する。
- 被告は、被疑製品に供電機構、ガス源、タイマーがないので、オール・エレメント・ルールに基づけば専利権侵害が成立しないと主張した。しかし、被告は上記のマニュアルで利用者が自らガス源と直流電源をつなぐように手引きをするので、利用者がそのマニュアルのとおりガス源と直流電源をつなぐ場合、本件専利の請求項1の全ての要件を満たす。ほかの抗弁事由がなければ、被告は本件専利の請求項1に対する侵害行為の教唆者となり、台湾の民法第185条第1項、第2項の規定によれば、共同不法行為が成立することが可能である(裁判所によれば、これは学説上の「誘引侵害」(induced infringement)に相当する)。それゆえ、たとえオール・エレメント・ルールに合致しないとしても、必ず侵害責任を免れられるわけではない。
裁判所は、専利請求の範囲を解釈した末に、最終的に被疑商品が本件専利を侵害しないと認定したが、本件のようにマニュアルを通じて使用者が全ての専利請求の範囲の要件を満たすように手引きをする行為が民法上の共同不法行為に該当する可能性があり、オール・エレメント・ルールのみに基づいて責任を免れられないと見解を示した。今後、上記の見解が知的財産裁判所の間接侵害に対する共通の見解となれば、専利権者の権利を一層保護できると思われるので、今後引き続きその動向を注視していく必要がある。
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