台湾における民事訴訟の「証拠保全」は、起訴前に裁判所を通して証拠を収集・保全するルートを申立人に提供する制度である。特に専利権の侵害案件において、権利者が起訴する前に、この制度を利用して権利侵害と損害賠償に係る証拠を保全しなければならない場合がよくある。
台湾の知的財産裁判所(以下、知財裁判所と称する)が2008年7月1日に設立されてからもうすぐ10年が経つが、その設立初期において、証拠保全の許可率の低さが批判の的となっていた。この許可率が低い現象が取り上げられたあと、知財裁判所も相応の対応をしている。知財裁判所のウェブサイトに掲載された統計資料(下図参照)によると、近年、証拠保全の許可率は確かに以前より高くなっており、知財裁判所設立後の初めの5年間の許可率は3割未満だったが、現在、既に5割以上に上っている。

証拠保全の申立と審理手続の当事者は、一方のみである。具体的に言えば、証拠保全の申立を受理後、知財裁判所は通常開廷して申立理由を審理するほか、どのように証拠保全の対象に対し保全を行うかに係る事務的事項(例えば、証拠保全の対象の所在、どのように証拠保全の対象にアクセスし、どのようにそれを取得、保管するか)について聴取することもある。知財裁判所が証拠保全を許可する決定を下し、且つその決定書の主文により相手方が支配する場所で証拠保全を行おうとする場合、知財裁判所はさらに現場で証拠保全を行う時間について申立人と調整する。
一方、近年のいくつかの案件から、上記のような現場における証拠保全と異なる証拠保全の態様が見られる。例えば、知財裁判所の106年度民声字第4号、106年度民声字第35号、106年度民声字第53号の決定で、裁判所は現場における証拠保全を命じず、提出命令で期限内に証拠保全の対象(例えば侵害品、技術文書、販売資料等の物件、書類)を自ら裁判所に提出するよう証拠保全の相手方に求めた。とりわけ、2018年1月の106年度民声字第53号の決定では、裁判所は、相手方の半導体メーカーに対し、決定書受領後の3日以内に被疑侵害品のウェハを、7日以内に関連の技術文書を、及び10日以内に関連の販売資料を提出するよう要請した。
相手方が裁判所の決定により証拠を提出しない可能性もあるので、裁判所は、相手方が提出を拒む際の制裁の効果をこのタイプの決定書に記載した。即ち、相手方が証拠の提出を拒む場合、裁判所は、台湾の民事訴訟法第345条、及び第282条第1項によりそれを「証明妨害」として、証拠保全の申立人の主張、又は申立人がその証拠を以て証明しようとする事項が真実であると認定することができる。
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