周知の通り、ICT企業やIT企業といった非金融機関は、ファイナンステクノロジー(いわゆるFinTech)におけるパイオニアである。台湾においてこれら企業は、金融機関さながらの役割を果たしつつ、専利を取得することによって、金融機関にとって侮れない競合となっている。
非金融機関が台湾専利出願とポートフォリオにおいて、どのような傾向や特色を形成してきたのか。どのような国の企業・グループが中心となっているのか。そして、台湾の金融機関と比べて何が異なるのか。これらは多くの台湾FinTechに注目する方々にとって気になるところであると思われるが、本文ではこれらについてプライマリーな研究をしてみたいと思う。
知的財産局のウェブサイトに掲載されている「IPC国際特許分類」の内容によると、分類コードG06Qは主に「行政目的、管理目的、商用目的、経営目的、監督目的または予測目的に特に適用するデータ処理システムまたは方法」であり、FinTechの一般的な機能に最も関連していると言える。このため、以下ではこのG06Qに付随するグループ(G06Q-20・G06Q-30・G06Q-40、下記表の通り)で統括する専利を代表として、FinTech専利について調べてみる。

ここで、上記IPC分類により、特許の20年の期限で線引きをして、知的財産局の「中華民国専利情報検索システム」で1998年1月1日から2018年1月21日を出願日とする特許と実用新案の出願を検索してみた。その結果、過去20年間に金融機関1が特許・実用新案を出願した件数は378件であり、非金融機関が出願した件数は6263件であった。その内、学術機関が440件であり、非金融機関の7%2を占める。また、出願人を国籍別で見ると、金融機関の特許・実用新案出願の主な出願人は、台湾出願人であることが分かる。

図1をベースに、更に出願人を調べてみると、その結果は図2のとおりである。この図から、過去20年間に上記IPC分類で統括される専利出願件数トップ103のうち、台湾と外国の出願人は半々であることが分かる。しかし、出願件数比率から言えば、トップ10ランキングに入る外国出願人の出願件数が占める割合が6割を超えている。この統計範囲ではアリババグループが首位に立ち、その他の出願人を大幅にリードしている。次いで、中華電信グループが第2位、ヤフーグループが第3位となっている。そして、金融機関でトップ10に食い込んだのは國泰グループのみであった。

また、専利出願の逐年傾向を分析した結果が、図3の通りである。この図から、非金融機関による特許と実用新案の出願件数が、2000年から少しずつ増加し、現在までの総件数が目を見張るものであることが分かる。反して金融機関の専利出願は、2000年以前は主に外国出願人によるわずかなものであったが、2000年以降になって民間銀行が出願人名に挙がるようになってきた。しかし、出願件数としてはやはりわずかなものであり、他人との共同出願も含まれている。その後、緩やかに増加はしているものの、低い件数のままであり、特にリーマンショック後の2009年と2010年の年間出願件数は、また元通りの低いものとなっている。2011年より金融機関の件数は以前のレベル(多くはない)に戻ったが、この時同時に非金融機関による専利出願量も回復し、増加もし始めていたため、金融機関による出願量は依然として非金融機関に遠く及ばないものとなった。ただし、2016年からは金融機関による専利出願の増加が顕著となり、しかもそれらは主に台湾出願人によるものであった。これは、金融機関がFinTech専利 を出願することに、政府が協力並びに推奨してきた結果が初めて現れたものと言える4。

更に専利の種類を分析した結果が、図4のとおりである。目下のところ、非金融機関による出願は特許が主であり、一方、金融機関による出願は実用新案の方が特許より多くなっていることが統計の数字から表れている5。
FinTech専利の属性から考えると、将来的に金融機関が出願する専利種類は、徐々に特許メインになってくるものと考えられる。

これを、IPCの分類で分析した結果が、図5の通りである。この図から、金融機関が出願した技術は主に金融及び保険(G06Q-40)であり、次いで支払のためのスキーム(G06Q-20)であることが分かる。一方、非金融機関が出願した技術は、電子商取引(G06Q-30)が主である。注目すべきは、金融及び保険と支払のためのスキームに関する出願件数において、非金融機関がやはり金融機関より多いことである。つまり、非金融機関が主に出願する技術分野が金融機関と異なっていたとしても、現時点では全体的に占める件数が多いのみならず、金融機関による専利出願がある主な技術分野においても、やはり件数においては非金融機関の方が多いということである。

上記をまとめると、台湾で出願されるFinTech専利は、やはり非金融機関が主役であると言える。そしてその一方で、日本の銀行や企業の姿が比較的見受けられない。この点は、日本の読者の方に留意していただきたい現象である。
1.中央銀行のオフィシャルサイトに掲載されている台湾と外国の銀行・生命保険会社・損害保険会社と金融持株会社、並びに外国保険会社・クレジットカードセンター・外国クレジットカード及びキャッシュカード会社を含む。
2.本文の検索結果は制限が無いわけでは無く、特許には出願公開制度が設けられており、特許出願は出願日から18ヶ月後に自動的に一般に公開される。このため、検索日から18ヶ月前までの特許出願と、検索日から6ヶ月前までの実用新案登録出願は、公衆がその全貌を掌握することが難しい状況にある。このため、本文の検索結果はいずれも「現時点で知り得る」専利出願であることにご注意いただきたい。
3.アリババグループには、アリババグループサービス社とアリババクループホールディング社を含む。
中華電信グループには、中華電信社と中華電信社電信研究所を含む。
ヤフーグループには、「雅虎股份有限公司」と「雅虎公司」の両表記を含む。
マイクロソフトグループには、マイクロソフト社とマイクロソフトテクノロジーライセンスLLCを含む。
統一クループには、統一超商社と統一資訊社を含む。
國泰グループには、國泰世華商業銀行と國泰世紀損害保険社と國泰生命保険社を含む。
4.上記の通り、統計の数字には2016年以降に出願されたものの未公開または未公告の専利出願は含まれていない。この為、2016年と2017年の実際の専利出願件数は図3に記載の出願件数よりも多いものと思われる。
5.特許の公開・公告がなされる時期は、実用新案の公告時期よりも後であるため、更に多くの特許出願が金融機関により出願され、審査中であるものの、未公開のためにその存在が未知である可能性も否定できないことにご注意いただきたい。