商標の登録後、自ら商標を変更し、又は付記を加え、他人が使用する同一又は類似の指定商品又は指定役務に係る登録商標と同一又は類似となり、関連需要者に混同誤認を生じさせるおそれがあるとき、商標主務官庁は職権又は請求によりその登録を取り消さなければならない、と台湾商標法第63条第1項第1号に規定されている。
本件は、台湾の康鉅国際有限公司(以下、「康鉅社」という)が、第18類スーツケース、アタッシュケースを指定商品として、係争商標「諾瓦納Rowana」(図一)を登録出願し、第1563171号として商標登録されたが、当該登録商標を「
」(図二)のように変更し使用していたことに対し、ドイツ企業RIMOWA GmbH(以下、「RIMOWA社」という)は先行登録商標「
」を以って、係争登録商標が前揭商標法における商標の変更に係る規定に該当するとして、当該係争登録商標の取消しを請求した事案である。そして、知的財産局の審査により係争登録商標を取消す処分が下されたが、その後、訴願手続きを経て行政訴訟に至り、2017年12月21日付にて知的財産裁判所により判決が下された[1]。
前記判決では、商標法第63条第1項第1号に規定する商標登録の取消に係る要件について次の2点が示された。(1)商標権者が商標登録の後、自ら商標を変更又は付記を加えた行為があるとき、及び(2)変更又は付記を加えた商標が他人が使用する同一又は類似の指定商品又は指定役務に係る登録商標と同一又は類似するとき。
知的財産裁判所によれば、商標の変更又は付記を追加しての使用とは、商標権者が登録商標の文字、図形、色彩等について変更又は他の文字、図形を加えることにより、実際に使用されている商標がその登録商標と相違し、かつ両商標が社会通念上、同一性を失っていることを指す。本件では、康鉅社が実際に使用している商標は、係争登録商標の外国語「Rowana」に囲み枠を加えたものであり、中国語の「諾瓦納」がない。それに対して、登録された係争登録商標は中国語の「諾瓦納」と外国語の「Rowana」が上下に配列され、かつ囲み枠のない表示であったことから、知的財産裁判所は係争登録商標を変更し付記を加えたものであると認めた。更に、図二の商標は、図一の登録商標とは明らかな相違が見られるため、社会通念上及び関連需要者の認識によれば、それが登録商標と同一の商標であると認識させるには至らず、すでに同一性を失っている。よって、知的財産裁判所は、康鉅社が確かに係争登録商標を変更し付記を加えた状況があると認定したものである。
また、前述した要件(2)について、知的財産裁判所は、実際に使用されている図二の商標を引用登録商標と比較すると、いずれも「R」を語頭とする6つのローマ字と楕円形の囲み枠からなり、両商標のデザインが類似していることを認めた。さらに、称呼についても両商標とも「R」から始まり、「A」で終わることから、一般的知識及び経験を有する関連需要者が商品の購入時に通常払う注意力では、誤認する可能性があり、要するに、両商標は外観、称呼等のいずれも類似している。また、知的財産裁判所は、両商標が類似しているだけでなく、康鉅社の商品の外観もRIMOWA社のものと類似していること、かつプロモーションにおいて、当該社が、係る商品が欧米のブランドであると意図的に誘導していたことも特別に斟酌した。すなわち、係争登録商標はその実際の使用時に、すでに関連需要者の混同誤認を生じさせていたこととなる。
知的財産裁判所は以上の理由に基づき、係争登録商標は前掲の商標法における取消事由があるとして、取消請求成立維持の判決を下した。
商標法第64条には、商標権者が実際に使用している商標が登録商標とは異なるものの、社会の一般通念上その同一性を失っていないときは、その登録商標を使用しているとみなす、と明文規定されている。よって、商標の登録後、実際に使用される商標は必ずしも登録商標の表示と全く同一である必要はない。しかしながら、前掲の事案から分かるように、登録商標が取り消されないためには、実際に使用する商標と登録商標とが同一性を有すべきこと、並びに他人が使用する同一又は類似の指定商品又は指定役務に係る登録商標と同一又は類似ではないことに注意する必要がある。
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