国際的な企業活動が複雑になるにつれ、企業間の競争は益々熾烈さを増し、台湾においては営業秘密を侵害する案件も多発しています。企業の研究開発成果と競争力を保護するために、台湾では国会で可決された営業秘密法の改正案が2013年1月30日に頒布されました。この改正では、営業秘密を侵害する際の刑事罰が加えられたほか、台湾以外の国や地域に利用することを意図して営業秘密を窃取する行為に対する刑事罰も加重されました。なお、2016年4月に、台湾の行政院法務部は、適切に営業秘密を侵害する重大な事件を検察署に処理させるために、「検察機関が営業秘密法に違反する重大な案件を処理する際の注意事項」(中国語名:檢察機關辦理重大違反營業秘密法案件注意事項)を制定し、この類型の事件を処理するための検察官を指定するよう各検察署に要請しました。また、法務部は、営業秘密の要件及び侵害の態様を整理する表を作成し、営業秘密が侵害された被害者がこの表に記入することにより、この類型の事件をより効率的に処理することが可能になります。
さらに、高額な損害賠償金が命じられるため社会的に注目される営業秘密に係る民事訴訟の案件も増えつつあります。そのうち、台湾の知的財産裁判所が2017年12月6日に下した102年度民営訴字第6号民事判決は、近年で最も代表的な案件です。この案件において知的財産裁判所が認定した事実によれば、原告(某光学部品メーカー)に在籍していた四名のエンジニアは、2011年の5月、6月頃に被告(他の光学部品メーカー)に転職し、被告のレンズの生産工程自動化を図るために、原告から窃取された営業秘密を被告に持ち込みました。それどころか、被告がその窃取された営業秘密の一部を台湾の知的財産局に出願し2件の実用新案を取得したため、原告の営業秘密は公衆に知られてしまいました。よって、知的財産裁判所は、原告の著作財産権と営業秘密が侵害されたとして、被告、被告の責任者とその四名のエンジニア(以下、被告らといいます)が連帯して15.2億台湾ドルの損害を賠償しなければならないと判断しました。現在、被告らは既に自分に不利な部分について二審に控訴したようです。
本件の判決では、損害賠償額の計算が原告による開発のコストを元になされていることが注目に値します。知的財産裁判所の認定によれば、原告は本件の営業秘密を開発するために、6億台湾ドル以上の開発費用を支出しました。それに対し、不法に原告の営業秘密を取得した者は、対価を支払わずに他人が努力して開発した成果を受けることが可能となります。プラスチックレンズ市場において、原告が高い市場占有率、及び同業者より高い利潤率を得られる事実から鑑みれば、その営業秘密が原告にもたらした莫大な経済的価値は原告の開発費用を遥かに超えています。したがって、その営業秘密の開発費用により損害賠償を計算すべきであるという原告の主張に正当な理由があると裁判所は判断しました。また、被告らによる営業秘密の侵害は故意に基づくもので、且つその情状が重大でしたので、裁判所は、原告が営業秘密法第13条第2項により実際の損害額の3倍の損害賠償金を請求することを認め、15.2億台湾ドルの損害賠償金を命じました(本件の判決内容は営業秘密に係るため、その全文が公開されていませんので、被告らがどのように抗弁したかは不明です)。
上記を受け、台湾の法制度においても実務においても営業秘密に対する保護が強化され、行政当局と裁判所が知的財産を重要視していることも伺えます。一方、営業秘密の法的要件に合致させ、紛争が起こる場合に営業秘密法上の権利を主張できるために、台湾で事業を展開する企業は、営業秘密の保護を日常的な業務としがら、営業秘密の開発と管理、人事管理、従業員又は取引相手との契約、秘密保持措置等の様々の面で適切な制度を作る必要があると思われます。
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