SAINT ISLAND INTELLECTUAL PROPERTY GROUP

ニュースレター

商標権非侵害確認訴訟の台湾実務上の動向

台湾では、他人の商標権を侵害したと主張された業者が非侵害確認訴訟を用いて商標侵害の紛争を解決しようとした例が見られるが、非侵害確認訴訟の発展はまだ初期段階にあると思われる。調べによると、2008年に台湾の知的財産裁判所が創立されてから2018年9月末にかけて、商標権侵害の紛争に係る非侵害確認訴訟の判決は20件未満である。一方、上記の現状とは裏腹に、知的財産裁判所による最近の二件の非侵害確認訴訟の判決は、その実務上の重要性により台湾の知財実務者の関心を引き寄せている。

一つ目の判決(以下、判決一と称する)は、2018年8月上旬に言い渡された、ブルズワン社(Bullsone)を原告とするものであり、二つ目の判決(以下、判決二と称する)は、2018年9月に言い渡された、台湾の維他露社を原告とするものである。その注目すべき点は、判決一において、知的財産裁判所が二段階審査を用いて非侵害確認訴訟の要件が満たされているか否かを確認したことと、判決二が、他人の商標権を侵害したと主張された業者が商標の非類似により非侵害確認訴訟に勝訴した最初の例であると同時に、商標権者の非侵害確認訴訟の立証責任も訴訟の議題として取り上げられていることにある。

先ずは一つ目の判決の背景を説明する。本件の原告のブルズワン社はソウルを本拠地として車のメンテナンス品を販売する業者である。ブルズワン社は、栄養ドリンクの最大手のレッドブル社(Red Bull)を被告として、レッドブル社の「二匹の雄牛」の商標でブルズワン社のマークの使用を差し止められないことを確認するよう知的財産裁判所に非侵害確認訴訟を提起した(ブルズワン社のマークは、一匹の雄牛の図と、「Bullsone」及び「勁牛王」という文字の三部分により構成されている)。しかし、この案件において、上記のマークに関して当事者間に紛争が確実に存在しているかどうかが問題となっている。そもそも、レッドブル社はブルズワン社の台湾代理店に警告書を送付し訴訟の提起を仄めかしたことがあるが、その警告の対象は上記の三部分により構成されているマークではなく、そのマークの以前のバージョン(一匹の雄牛の図)であった。ブルズワン社の論理によると、レッドブル社は警告書で「一匹の雄牛、又はそれと他の要素との結合を使用することを停止せよ」と要請しているので、商標権の排他的性質から判断すると、上記の三部分により構成されているブルズワン社のマークは必ずレッドブル社の警告書の警告した範囲に入ってしまう。しかし、裁判所は、ブルズワン社の提訴は「原告に直ちに確認判決を受ける法律上の利益がある」という非侵害確認訴訟の要件を満たさないとして、ブルズワン社の論理の正しさを否認した。この判決によると、上記の要件を満たすために、原告は少なくとも一定の具体的な資源を商標権侵害が疑われたマークの使用前の準備に投入しなければならないほか、かつて商標権者に「同一のマークが商標権を侵害している」と主張されたことがなければならない。この二つの条件が欠如しているため、裁判所は、ブルズワン社の提訴が実在していない紛争について裁判所の意見を求めているに過ぎないとし、ブルズワン社の提訴を却下した。

一方、二つ目の判決では原告が勝訴した。本件の原告の維他露社は、台湾で有名な茶系飲料の商標の所有者であり、2016年に本件の被告に対し非侵害確認訴訟を提起した。本件においては、双方当事者のマークは実際使用されているものであり、被告のマークは、「繊緑」という粉末茶を指定商品とする登録済みの商標であり、原告のマークは、上下二段で構成される「毎朝健康 繊緑茶」という、お茶飲料に使用されるものである。この案件の発端は、被告が原告に対し警告書を送付し、維他露社のマークが被告の商標を侵害していると主張したことである。これに対し、維他露社は被告の主張を否認するべく反論状を被告に送付した。これにて当事者間に実在の争議が発生し、「原告に直ちに確認判決を受ける法律上の利益がある」という非侵害確認訴訟の要件は問題なく満たされている。そして、二年に渡る当事者間の訴訟合戦の末、維他露社は、維他露社の「毎朝健康」が著名商標であることなどの理由で、被告の商標と類似せず、消費者に混同誤認を生じさせるおそれがないと控訴裁判所(知的財産裁判所)に説得した。また、裁判所も判決において、被告が「維他露社が被告の商標を侵害したという主張」及び「消費者が混同誤認するおそれがあること」について立証責任を尽くしていないと指摘した。

上記の二件の判決から、非侵害確認訴訟の要件を満たすために、大まかな請求でなく、明確な請求をしなければならないと言える。また、将来的に誤解が発生することを避けるために、権利侵害したと疑われた業者が商標権者からの警告書を受けた場合、反論状で回答、釈明するよう商標権者に要請することも考えられる。そして、非侵害確認訴訟に勝訴するために、原告が自分に有利な証拠を大量に提出することが望ましいが、非侵害確認訴訟の原告の立場としては、商標権者が主張したような商標権侵害が確かに発生したことについて立証責任を負うよう商標権者に要求しても差し支えない。

-----------------------------------------------------------------------
本ウェブサイトのご利用に当たって、各コンテンツは具体的事項に対する法的アドバイスの提供を目的としたものではありませんことをご了承下さい。

Back