台湾商標法第6条には「この法律でいう商標の使用とは、販売を目的として、商品・役務若しくはこれらの関連物品に商標を用い、又は平面画像・デジタル映像/音声、電子媒体若しくはその他の媒体を通じて商標を利用し、関連消費者がそれを商標であると認識できるものを指す。」と規定されている。この規定によると、インターネット上で商標を使用するとは、その行為が販売目的であって、消費者が当該文字、図形、音声等を商標であると認識できるものが該当する。一方、その標示が商品又は役務を説明するのみで、販売目的ではない場合、又は消費者がその標示を商標であると認識できない場合は、商標の使用にはあたらない。また、商標権の侵害を主張する者は、その使用者の行為が上記の商標の使用に該当することを証明しなければならない。証明できない場合は、同一又は類似の商品・役務に標示されていたとしても、商標権の侵害と認められない。
インターネットの普及後、ウェブ上での商品や役務の取引は、日常生活の一部となりつつある。商品や役務の提供者は、マーケティング戦略として、しばしば自ら開設したウェブサイト、ショッピングサイト、オークションサイト、ブログ、検索エンジンを利用した広告を通じて、商品又は役務の関連情報を発信している。インターネット上で商標を使用して広告する方式は多岐にわたっており、検索エンジン業者からキーワードを購入する形で掲載を依頼する有料広告もよく見られる方法の一つである。一般的な検索サイトの検索結果は、ウェブページの内容と入力したキーワードの関連性及びクリック率によって掲載順が決められている。つまり、キーワードとの関連性が高く、検索者のクリック数が多いほど上位に排列されることになる。検索者は、比較的上位に表示されているウェブサイトしかクリックしないことが多く、表示の順番に影響を及ぼすキーワード広告が生まれた。
これは、検索者が該当するキーワードを検索したときに、広告主のサイトが上位に排列されるように設定するものである。しかし、このような検索結果は、ともすると検索エンジンの精度に対する信用を損なうことにもなりかねない。このため、キーワード広告を提供する検索エンジンでは、検索結果にキーワード広告が表示される場合、色や文字を用いて「広告」であることを明確に表示し、それが検索結果の一部ではないことを表明している。これにより、使用者は検索結果のページに表示されたキーワード広告をクリックするか否かを自分で決定することができる。このようなビジネスモデルの下では、広告主が他人の登録商標をキーワードとしてキーワード広告の契約をし、使用者がその商標をキーワードとして検索したときに、広告主のホームページにリンクさせる行為が商標の使用行為に該当するかどうか、争議が起こる。
アメリカ及びヨーロッパでは、既にキーワード広告に対するいくつかの争議が起こっており、関連判決が下されている。先般、台湾の知的財産裁判所でもこの種の事件に対して判決を下し、法的見解を示している。これは、飲食店、ホテル、喫茶店、ビュッフェレストラン等の役務を指定した登録商標「出一張嘴」についての事件である(事件番号:知的財産裁判所98民商上字第11号)。権利侵害者は商標権者の同意を得ずにグーグル社と「出一張嘴(「口を出す」の意)」をキーワードとする広告契約をした。消費者が「出一張嘴」という文字を検索すると、「出一張嘴來吃燒?(「口を出して、バーベキューを食おう」の意)」という文字が表示され、権利侵害者が経営するレストランにリンクする。これに対し、商標権者は、権利侵害者が自らの同意を得ずに「出一張嘴」という文字をキーワードとして広告契約したことによって、検索結果に「出一張嘴」という表示が表れ、権利侵害者のレストランが商標権者の加盟店であると消費者に混同誤認させることは、商標権の侵害に該当すると主張し、損害賠償を求める民事訴訟を起こした。
知的財産裁判所は、権利侵害者が「出一張嘴」をキーワードとする広告を行うことは係争商標権を侵害する、という商標権者の主張に対し、以下の見解を示した。
商標の使用については、以下の要件を備えていなければならない。
1. 使用者が自己の商品又は役務の出所を示す意図を有すること。
2. 使用者が商品又は役務を販売・促進する目的を有すること。
3. 商標を標示する積極的な行為があること。
4. 標示されたものが消費者に商標の使用であると認識できるもの。
上記から商標としての使用か否かを判断する他、平面画像、デジタル音声・影像又は電子メディア等の画面の配置、字体・フォントサイズ、文字デザインの大きさ、人目を引くか否か、及び消費者がその商標を商品の出所を示すものと認識しているか等の状況を総合して判断する。商品の包装や広告に当該文字・図形が使用されていれば、商標としての使用であると判断されるわけではない。そして、商標の侵害は、行為者がその登録商標と同一の商標を使用していることが要件であり、商標として使用していない場合、商標権の侵害を問うことはできない。権利侵害者がグーグルサイトに掲載した「出一張嘴」をキーワードとして検索するキーワード広告は、有料広告に過ぎず、キーワード広告の内容自体には、係争商標の図案をサービスの販売促進として使用していない。また、キーワードを入力した使用者も、これによって広告が提供するサービスが商標権者によるものであると認識又は混同することはないため、商標の使用行為にはあたらない。更に、権利侵害者の上記行為は商標の使用に該当しないため、商標権の侵害とは言えない。
上記のように、裁判所は広告主が他人の登録商標をキーワードとしてキーワード広告の契約をしたとしても、他人の登録商標を検索に使用するのみであれば、商標の使用に該当しないと認定した。