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ニュースレター

 現在、台湾における専利侵害実務では、侵害をしている物や方法が文言上で侵害とならない場合、均等論上で侵害となるか否かを判断することが一般的である。  裁判所で度々引用されている重要参考資料として、台湾知的財産局が2004年に公布した『侵害鑑定要点』が挙げられる。その中に均等論の適用要否について、次のような記述がある。

 鑑定対象に解析後のクレームの構成要素が1つでも完全に欠落すれば、均等論は適用されない。

 均等論とは、解析後のクレームの構成要素と鑑定対象の対応的な素子・成分・工程やその結合関係の中で、文言上では一致していない技術内容を逐一比較して判断すべきであり、クレーム全体と鑑定対象を比較してはならない。

 鑑定対象とクレームの構成要素における“技術手段”・“機能”・“結果”がひとつでも実質的に異なるときは、均等論が適用されない。

 台灣杜邦社(台湾デュポン社)が新揚科技社を訴えた事件で取り上げられたのは、ポリイミド積層板に関わる専利であった。その主な争点は、クレーム1(独立クレーム)に含まれている要件“1ないし30重量%のアセトンを含有する極性非プロトン性溶媒である”という文言に関してである。

 被告の製品における極性プロトン性溶媒にはアセトンは使用されておらず、単にN-メチルピロリドン(NMP)が用いられていただけであった。苗栗地方裁判所並びに台湾高等裁判所台中支所は、いずれも、1ないし30重量%のアセトンを含有することは係争特許に欠かせない構成要素であり、被告の製品にこの成分が含まれているわけでないので、均等論による侵害は構成されないとの判決を下した。

 台灣杜邦社は引き続き最高裁判所に上訴し、最高裁判所は2010年3月11日に、本件を知的財産裁判所で改めて審理するよう判決を下した。このとき、最高裁判所は双方の争議に対して決定的な意見は述べていないが、知的財産裁判所において台灣杜邦社が挙げた下記の争点について調査し、考量に入れるよう要求している。

1.  NMPとアセトンはいずれも極性非プロトン性溶媒であり、両者は均等に表現されている。 

2.  係争製品と係争特許のクレーム1の機能・方法・結果は実質的に同一である。

  3. 杜邦社の専門家の証言によると「合成粘度と溶解度から言えば、ポリアミド酸を加工する上ではNMP単独であっても、アセトンを2%含むNMPであっても、同様の効果がある。」 

 知的財産裁判所は、この件で権利範囲の解釈や、均等論の適用、いかに最高裁判所の指摘に答えるかについて触れることになる。これは、今後の均等論の発展に影響を及ぼすものと思われる。興味深いのは、係争特許の明細書において“本件で用いられる極性非プロトン性溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、γ-ブチロラクトン(g-Butyrolactone)等が挙げられ、これらの溶媒は単独又は混合して使用することができる”と記載されていることである。そしてまたその上で、クレーム1においては“1ないし30重量%のアセトンを含有する極性非プロトン性溶媒”のみが選ばれている。この事実が知的財産裁判所に斟酌されるか否かも注意深く観察する価値があるといえよう。

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