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著名商標の保護範囲 ―――著名の程度と多角化経営

 台湾商標法第23条1項12号では、他人の著名商標もしくは標章と同一もしくは近似で、公衆に混同誤認させるおそれがあるとき、または著名商標もしくは標章の識別性もしくは商業的名誉を減損させるおそれがあるとき、登録を受けることができないと規定している。また、台湾知的財産局が公布している「著名商標保護審査基準」によると、公衆に混同誤認させるおそれがあるか否かを判断するとき、商標識別性の高さや、商標が近似しているかどうか及びその程度、商標もしくは役務が類似しているかどうか及びその程度、商標権者の多角化経営の状況、並びにその商標に対する関連消費者の認知度等を考慮しなければならないとされている。

 以前、米国企業のアップル社(Apple Inc.)は、その著名商標「APPLE」・「APPLE Logo」等を根拠として、台湾企業「山寶傳播有限公司」の第16類と第18類の商標「Apple Line & Device」に対し、商標法第23条第1項第12号の規定に違反すると異議を申し立てた。

 本件が知的財産局で審査された際、根拠となった商標「APPLE」・「APPLE Logo」の知名度は否定されなかったものの、両商標の近似程度が消費者に混同誤認を来たすに至らず、商標における外国語「APPLE」とリンゴの図形は自然界でよく見られる果物の名称であり、独創性を有しないと認められた。そして、一般的に人が思いつきやすいものの商標識別性は低く、国内外の企業が文字または図形を商標図形の主要な部分として登録を受けている場合、市場では多くの近似の商標が存在するため、消費者は図形に含まれる「蘋果(“リンゴ”の意味)」・「APPLE 」やリンゴの図形を含む商標であれば、分別できるであろうと判断された。そして、知的財産局は商標「Apple Line & Device」が公衆に混同誤認させるおそれは無いとして、異議申立てを棄却した。

 その後、本件について知的財産裁判所へ行政訴訟が提起されると、裁判所はこれと異なる見解を示し、両商標の図形が近似していないとは言えないと認めた。また、“リンゴ”は確かに自然界に存在する果物であるが、アップル社が久しく経常的に使用したことで、商標の識別作用が高まり、大衆に十分に認知されており、他人が少々こだわりを持っていれば混同誤認を引き起こすことになると判断した。そして、著名商標はその著名程度と多角化経営の程度によって異なり、保護の範囲も差異があるものであり、著名商標が長期にわたって特定の商品または役務にのみ使用され、特定の市場または消費団体のみに対して著名性を有する場合、関連消費者に限り知られ、その保護範囲も特定の商品または役務に限定されるが、商標権者の多角化経営の範囲が広く、或いは公衆に熟知されていれば、その保護範囲は同一または類似の商標または役務に留まらず、関連性が低い商品または役務にも及ぶとの見方をした。

 本件で言えば、アップル社は商標「APPLE」・「APPLE Logo」をコンピューター関連商品に使用している他、周辺のコンピューター類ではない商品に対しても数多く使用している。すなわち、アップル社は長年にわたって商標「APPLE」・「APPLE Logo」を多角化経営における商品または役務に使用しており、その経営形態も旧式の実店舗販売のみならず、広く消費者の生活に浸透していることから、係争商標の指定使用商品がコンピューター周辺機器と異なっていても、やはり公衆に混同誤認を生じさせるおそれがあるとの見解を示した。そして、知的財産局の異議申立て棄却を取り消す処分を下した。

(知的財産裁判所99行商訴80・145号)

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