台湾の民事訴訟には「証拠保全(evidence preservation order, “EPO”)」制度があり、訴訟提起前に裁判所を通じて証拠を収集・保全できるルートが提供されている。知的財産権の民事案件では、度々この制度により権利侵害や損害賠償の為の証拠を保全する必要が出てくる。台湾知的財産裁判所において、2008年7月1日の設立後、2009年2月28日までに受理された証拠保全申請は、計42件が裁定され、その内わずか7件のみが許可を受け、許可率は20%に止まっていた。裁判所は現在満5周年を迎えたが、証拠保全の許可率に変化はあったのだろうか。
その結果は、この制度を利用しようとする人の気をもませるかも知れない。専利権侵害案件証拠保全を研究する某学術計画が作成した統計結果によると、台湾知的財産裁判所が2008年7月から2012年12月までに為した計158件の専利に関連する証拠保全の裁定のうち、わずか20件のみが許可を受け、許可率は15%を下回った。上述の知的財産裁判所の設立時直後より低く、許可率が向上することは無かった。そして、知的財産裁判所設立前に、一般地方裁判所における専利証拠保全案件が40%を超える許可率があったことと比較すると、知的財産裁判所は証拠保全を認めるハードルを下げる必要があるようにも思われる。
該学術計画が、知的財産裁判所の多くの裁判官と対談したところ、一部の裁判官は、許可率が上がらない原因として、訴訟提起前の証拠保全制度が濫用されることで、専利権者が先方の営業秘密を偵察・取得する手段となり、メディアを通じて先方の商業名誉を傷つけることに陥るため、厳しい審査が求められる旨を挙げている。また、台湾知的財産裁判所の管轄が全国にわたっていることから、現場に赴いて証拠保全を行うことが、裁判官にとっては非常に面倒であり、予期できない突発的な状況に遭遇する可能性があることも、裁判官の評価に影響を及ぼすものと考えられる。
申請者が台湾人であるか外国人であるかによって、違いがあるかについては、裁判官によると、台湾は保護主義の問題が無いことから、外国の専利権者の申請成功率が台湾の専利権者のものより低いことはないとのことである。最後に、該研究機関は、裁判所における専利権侵害訴訟進行時の証拠調べ手続時に、被告又は第三者の証拠開示(discovery)機能を強化することができれば、訴訟提起前証拠保全制度の専利権侵害訴訟における重要度も低くなり、専利権者が低迷する証拠保全許可率に憂慮する必要が無くなるだろうと指摘している。
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