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専利権侵害訴訟におけるクレーム訂正のリスク

 台湾専利権侵害訴訟における被告は、訴訟中に専利有効性に対する抗弁をすることができ、また知的財産局に無効審判を請求することができる。ただ、裁判所はその無効審判の結果を待っているわけに行かず、有効性に対する抗弁について、自ら判断をしなければならない。この為、裁判所と知的財産局の判断が異なる可能性が生じるものの、両者の心が通じ合っているのか、異なる見解を示すことは、実際には非常に少ない。

 レアケースな見解違いは、やはり時折発生する。

 今年8月に下された専利権侵害訴訟における判決(第104台上1485号)で、最高裁判所は、当該専利権が無効審判中に行ったクレームの訂正に対して、知的財産裁判所と知的財産局が異なる処分を下したことに、懸念を示した。

 その訴訟の原告は、専利権者である某台湾通信技術の企業で、当該専利のクレーム1の記載は、下記の通りであった。

「一種使用反射器解決多點對多點遠距即時串流視訊傳輸及儲存瓶頸的方法,其特徴為…(リフレクタを用いたマルチポイント対マルチポイントの遠距離リアルタイムストリーミングビデオ伝送及びストレージのボトルネックを解決する方法であって、その特徴は…)」

 原告はその専利が方法専利であると主張したが、そこには“工程”に係る文言が無く、“特徴”とするものも、関係が不明瞭な幾つかのリフレクタの機能と内部装置に関する記述のみであった。この為、被告である台湾最大手のインターネット企業「中華電信(Chunghwa Telecom)」は、クレームが不明瞭であるとして、取消を求める抗弁をし、同理由により専利無効審判を請求した。そして、その応答として、原告は訂正手続きを取り、クレーム1の「其特徴為(その特徴は)」という記述を「包括下列歩驟(以下の工程を含む)」に訂正しようとした。

 専利法の規定では、無効審判手続き中になされた訂正について、知的財産局が併せて審査・査定することになっているが、知的財産局が訂正を認めようとする場合は、訂正後のクレームと明細書を無効審判請求人に送付して、意見を求めるべきである。

 本件でも、訂正関連の書類は確かに被告に送付されており、このことで知的財産裁判所の記録にも残されることになった。一般的に、知的財産裁判所はこの一連の動きで知的財産局が訂正を認める傾向にあることを認識し、訴訟においてもそれを尊重して同様な判断を下すものである。しかし、本件で知的財産裁判所は訂正を認めるべきではないと認定した。その理由は、この訂正が実質的な訂正に当たらず、訂正後のクレームに引き続き不明瞭な記載が残されているため、被告が援引しようとした専利法で許容されている“不明瞭な記載の釈明”には該当しないというものであった。更に、知的財産裁判所は、本件のクレームの記載が甚だしく不明瞭であり、方法の発明であるか、或いは物の発明であるかさえも判別することができないため、取消すべきであると認定した。着目すべき点は、他件と同様に本件においても知的財産裁判所は知的財産局に訴訟参加を求める通知をしていたが、知的財産局は参加を拒み、訂正を認めるか否かについても、時期尚早であると回答した。これは、もしかすると知的財産裁判所に自ら上記の判断を下す余地を与えるものであったのかもしれない。

 そのまま知的財産裁判所が判決を下し、原告が第三審に上訴した後になって、ようやく知的財産局は決定を下した。それは訂正を許可するとしつつも、更に詳しい理由として、訂正後の請求項が尚も進歩性を欠いていると認めるものであった。この判断の差異は最高裁判所により見出され、その判決において、知的財産局が訂正後の請求項を被告に送っているにもかかわらず、知的財産裁判所が訂正を認めるべきではないと判断したこと自体に疑問が残ると指摘した。
 本件は現在知的財産裁判所に差し戻されている。

 クレームの記述に瑕疵が残ることは、起こり得るものである。とは言え、より良い訂正方法を画策することができないわけでもない。専利権者がもしも起訴前に早めに気付いて、自発的に訂正を求め、訂正が認められてから起訴したとすれば、通常は比較的良い形勢を築くことができ、知的財産局の決定も早めに下されたであろう。
 

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