台湾の専利無効審判において、何人も登録が認められた専利について、無効審判の請求の趣旨、請求の理由、および先行技術文献を提出するほか、先行技術文献に開示された内容と請求項の技術的特徴との対応関係および対比結果を具体的に説明することができる。知的財産局は、無効審判の請求の趣旨、請求の理由、先行技術文献により争点を形成し、争点の範囲内で証拠を調査し、専利性の審査を行う。知的財産局が、請求人が提出した先行技術文献のうち、請求人が自ら引用していない箇所を用いて無効審判の請求が成立するとの審決を下した場合、不利な判断を受けた専利権者は、手続上の不利益を理由として行政救済を求めることがありうる。最近のある発明専利(I691922号)に関わる無効審判事件において、知的財産局は、請求人が引用していなかった先行技術文献の段落に基づき、当該専利に進歩性がないとの審決を下した。専利権者はその後、「知的財産局が職権による審査を行ったにもかかわらず、専利権者に意見を述べる機会を与えなかった」ことを理由に訴願を行ったが棄却されたため、知的財産及び商業裁判所(以下「裁判所」という)に行政訴訟を提起した。
裁判所は、113年度行専訴字第57号判決で専利権者の訴えを棄却した。裁判所は、知的財産局の判断は請求人が提起した争点の範囲内で行われたものであり、当事者の陳述に拘束されるものではないと判示した。裁判所の判断によると、無効審判から行政訴訟に至るまで、本件の争点があくまでも「先行技術の組み合わせによって当該専利の進歩性を否定できるか否か」であった。知的財産局が引用した段落は、請求人が引用した段落とは異なっていたものの、先行技術文献および争点の範囲を超えるものではなかった。さらに、実体的な判断においても、裁判所は、無効審判の請求人が提出した証拠は専利の進歩性を欠くことを証明できると認めた。その後、専利権者は最高行政裁判所に上訴したが、最高行政裁判所は、その114年度上字第522号判決(2026年8月13日)において、知的財産局が無効審判の請求の趣旨の範囲内で、すべての当事者の陳述、事実および証拠を調べた結果を総合的に考慮し、論理則および経験則に従って判断することができると強調した。その上で、たとえ審決の内容と請求人が主張した対応関係や対比が異なるとしても、それは依然として知的財産局が争点の範囲内で行った判断であるとして、専利権者の上訴を棄却した。
行政救済の手続きにおいて、専利権者は、無効審判の審決において請求人が引用していない箇所が引用され、これは、知的財産局が職権により請求人が提出していない請求理由及び証拠を斟酌する際、専利権者に通知して答弁させなければならないという専利法第75条の規定に違反していると繰り返し主張した。これに対し、最高行政裁判所は、専利法第75条にいう「職権による斟酌」とは、無効審判の争点の範囲外で、公益目的のために知的財産局が例外的に開始するものでなければならないと判示した。そのような状況の例としては、別件の専利侵害訴訟において当該専利の無効にかかわる他の証拠がある場合や、知的財産局が複数の無効審判を併合審理し、異なる無効審判の証拠が互いに補強し合えると判断した場合などが挙げられる。このような場合に限り、知的財産局は職権により請求人の提出していない請求理由や証拠を斟酌することができ、専利権者に意見陳述の機会を与える必要がある。しかし本件において、知的財産局が引用した証拠は争点の範囲を逸脱していなかった。したがって、最高行政裁判所は、本件は専利法第75条は適用されないと判断した。
上記の判決および知的財産局の実務に基づき、知的財産局は無効審判の審理において、当事者の陳述および先行技術文献の内容を斟酌して判断を行うものであり、先行技術文献の引用箇所の制約を受けないことが示されている。したがって、審決において、無効審判の請求の理由と異なる先行技術文献の段落を引用していたとしても、それが争点の範囲から逸脱していないと判断される可能性がある。そのため、無効審判を請求された専利権者は、請求人が提出した無効審判の請求の理由、及び引用した先行技術文献の段落以外に、請求人が引用していないその他の段落にも注意を払う上、それをもとに答弁、又は専利請求範囲の訂正を検討すべきであるといえる。
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