台湾商標法では、指定商品または役務の品質、用途、原料、産地、あるいは関連する特性の説明のみからなる商標は、登録を受けることができないと規定されている。
ただし、長期間にわたり反復して使用され続けた結果、消費者が当該商標から特定の商品または役務を連想するようになり、「後天的識別力」を取得した場合には、例外的に商品または役務の出所を識別する機能を有すると認められ、登録を受けることができる。
また、経済部知的財産局(以下、「知財局」という)が公布した「商標識別力審査基準」では、市場で新たに開発された商品または役務の名称について、以下のように示されている。
開発業者が付した商品または役務の名称が、たとえ創出されたものであったとしても、その商品または役務の直接的かつ明らかな説明である場合、それがどのような商品や役務を指すのか、またはその技術の内容がどのようなものであるのかを、人に容易に理解させることができると言え、他の同業者もそういった簡単で明白かつ直接的な表現を使用する必要がある。
このため、このような名称が特定の1人に対して排他的・独占的な権利を与えるべきではないこと、出願人が創出した名称であっても、やはり商品または役務にかかる説明に該当すると認めるべきであり、識別力を欠くものとされる。
出願人が創出して使用し始めた役務名称の商標識別力の判断については、知的財産及び商事裁判所(以下、「知財商裁」という)が最近下した115年度(2026年度)行商訴字第5号行政訴訟判決が参考になる。
本件行政訴訟において、原告である商標出願人は、2023年4月12日に「台灣寵物信託(台湾ペット信託)」という商標(以下、「係争商標」という)の登録を出願し、銀行・信託役務等の第36類、獣医役務・動物の美容等の第44類、及び法律業務・法規制遵守のための監査等の第45類役務の使用を指定した。審査を経て、知財局は下記の理由を挙げて拒絶査定を下した。
第一の理由として、係争商標は「台灣寵物信託」という文字のみで構成され、「台湾」は当地の地理的名称であり、「寵物信託」はペットの世話に必要な資金を信託することを指すため、消費者にとっては指定役務の主題・内容、営業地、または関連特性にかかる説明を伝えるものに過ぎず、関連消費者が当該商標を役務の出所を示す標識として認識するには足らず、他者の商品または役務と区別することは困難であり、先天的識別力を有しないとした。
第二に、出願人は、係争商標について自ら創作したものであり、市場において他に「台灣寵物信託」という文字を使用している者はいないと主張したが、係争商標は指定役務の直接的な説明であるため、たとえ現時点で出願人のみが「台灣寵物信託」を使用しているとしても、その語彙を競合他社がまだ使用していないからといって、当該語彙や事物が役務の特性に関する説明にあたらないことを示すわけではなく、関連消費者が理解する一般的かつ直接的な意味合いが役務の関連説明にあたる限り、識別力を有しないとした。
第三に、係争商標が後天的識別力を取得したとの主張については、出願人が提出した使用証拠が本件商標の使用資料ではないことから、係争商標が出願人によって長期間にわたり広範に使用されたことにより後天的識別力を取得したと認めることは困難であるとした。
出願人はこれを不服として、訴願及び行政訴訟を提起したものの、知財商裁は審理を経て知財局の見解を維持し、「台湾寵物信託」は確かに指定役務の記述的文字であり、先天的識別力を欠いていると判断した。
出願人は、係争商標は自身が創出したものであり、すでに係争商標を使用した業務を展開し始めており、後天的識別力を取得していると主張した。
しかし、知財商裁は、係争出願商標はデザイン化されていない文字「台灣寵物信託」のみで構成されており、消費者に与える印象は、その本来の文字の意味にとどまり、すなわち「台湾を創設地(発祥地)、役務提供地、または経営地とするペット信託」に関連するものという意味であると指摘した。そして、インターネット上にはすでに多くのニュースメディア、週刊誌、記事、動画資料などにおいて「ペット信託」に関するテーマが紹介または報道されており、台湾の消費者が簡単にその関連内容を検索・接触できる状態にあるとした。そして、「台灣寵物信託」という言葉が出願人が作り出した言葉であってもなくても、台湾の関連消費者は、一定の想像や思考、連想、推理を働かせるまでもなく、その文字全体が係争出願商標の指定役務と密接に関連する記述的文字であると理解できるため、先天的識別力は認められないと述べた。
さらに、出願人が提出したウェブサイトの資料やメディア報道などの証拠についても、係争商標が消費者の認知において単なる記述的用語であると判断できるに過ぎず、関連消費者が「台灣寵物信託」という言葉を出願人の提供する役務を表示する標識として認識していることを証明するには至らないため、係争商標が後天的識別力を取得したと認めることは困難であると認定した。
新たな商品や役務のために商標を選択する際、その新商品・役務の新機能や特性を商標創出の発想源とすることは珍しくない。例えば、旅客及び貨物の陸上輸送といった第39類の役務における「台灣高鐵 Taiwan High Speed Rail」商標の使用や、銀行業務、クレジットカード決済処理、第三者決済サービスといった第36類の役務における「台灣Pay」商標の使用がこれに該当する。
上記2つの商標は、指定役務を直接的に説明するものであるが、商標権者が長期にわたり広範に使用し続けた結果、後天的識別力を取得し、それぞれ登録第142416号、登録第1930367号の商標として登録が認められている。
独自に創出した商品や役務の名称が、直接的かつ明らかな記述的用語である場合、その創出者は当該名称を商標として長期、そして大量に使用すべきである。そうすることにより、商品や役務の出所を表示する根拠となり、後天的な識別力の取得につながりやすくなると言える。