台湾では、並行輸入品が市場に広く流通している。同一または類似の商標が、台湾と海外で同一の者によって所有されている場合、その商標が付された海外からの並行輸入品は一般に権利消尽の原則が適用され、侵害とはみなされない。一方、台湾と海外の商標権者が異なる場合、台湾の最高裁判所は、108年度台上字第397号判決において、これら異なる商標権者間に経済的または法律上の関係が存在する場合には、権利消尽の原則が依然として適用されるとの判断を示した(詳細は弊所の関連記事を参照)。さらに、最高裁判所は113年度台上字第882号判決において、国内外の商標権者における、「許諾契約や取次契約がある」、「同一の企業または企業グループに属する」、「持株会社と子会社の関係にある」、「独占販売されている」、「世界共通の同一のブランドイメージを用いたマーケティングが行われている」、「商標マーケティング戦略の共有がなされている」といった状況は、権利消尽の原則が適用されるか否かを判断する上で重要な要素となることを明らかにした。
また、台湾の知的財産及び商事裁判所は、最近の113年度民商訴字第56号判決において、本質的に排他権が同一の権利者に由来する場合、台湾の商標権者と外国の商標権者との間に経済的または法律上の関係がないかのように見せかける特別な手段を用いたとしても、権利消尽の原則は依然として適用されることを指摘した。
前述の知的財産及び裁判所の判決において、原告であるA社は、「菠丹妮」、「BOTANICUS」、「botanicus」という文字を用いた6つの商標(以下、合わせて本件商標と称する)の商標権者である。原告は、被告のB氏が、原告の同意または許可を得ることなくShopee上で本件商標を付した商品(以下、被疑侵害品と称する)を販売したとして、B氏を相手取って民事訴訟を提起した。これに対し、被告は、被疑侵害品はチェコのBOTANICUS社に由来したものであり、原告は第三者であるC社から6つの本件商標のうち3つ(以下、合わせて「本件商標1~3」と称する)を取得した後、C社とBOTANICUS社との間の許諾関係を引き継いだと主張した。さらに、原告はBOTANICUS社から商品を仕入れ、BOTANICUS社の商品の販売代理をしていたと主張した。したがって、原告とBOTANICUS社は経済的または法律上の関係を有しており、両者の商標権は実質的に同一の者に由来する。権利消尽の原則が本件に適用され、原告は被告が商標権を侵害したと主張できないことは言うまでもない。
この紛争について、知的財産及び商事裁判所は、まず最高裁判所の108年度台上字第397号判決を引用し、外国の商標権者と台湾の商標権者が許諾関係または法律上の関係を有する場合、外国での商標権と台湾での商標権は属地主義の原則に基づき異なるものの、図形が同一であり、かつ排他権が実質的に同一の権利者に由来する場合には、台湾において当該商標の登録を許諾された商標権者も、商標権消尽が適用されると指摘した。
そして、BOTANICUS社と原告との間に経済的または法律上の関係が存在するか否かについて、知的財産及び商事裁判所が調査した結果、以下の事実を確認した。(1)C社はBOTANICUS社のアジアにおける総代理店であり、C社は第三者であるD社を台湾における総代理店として授権していた。(2)C社およびD社は、台湾における代理権をE社(原告A社の前身)に付与していた。(3)原告はC社から本件商標1~3を取得した後、自らさらに3つの本件商標を出願した。(4)原告は代理権および本件商標1~3を取得した後、BOTANICUS社から商品を購入した。以上の事実に基づき、知的財産及び商事裁判所はBOTANICUS社と原告との間に経済的または法律上の関係が存在すると判断した。
さらに、原告は、2020年以降BOTANICUS社から商品を仕入れておらず、両者の間に経済的または法律上の関係はもはや存在しないと主張したが、知的財産及び商事裁判所は、台湾における本件商標1~3の登録はもとよりBOTANICUS社の同意に基づいて行われたものであり、経済的または法律上の関係がその後解消されたという理由だけで、BOTANICUS社の商品が並行輸入を通じて台湾国内市場で流通する権利を否定するのは不合理であるとした。
さらに、知的財産及び商事裁判所は、他に証拠を調査した結果得られた事実に基づいて、以下の様に指摘した:2020年、原告はBOTANICUSの代理権を第三者であるF社に譲渡したが、F社はその後もBOTANICUSから商品を仕入れ、台湾で販売し続けた。しかしながら、F社と原告の代表者は実際には同一の者であり、原告が国内代理権と商標権が異なる権利者に帰属しているかのように見せかけることで、BOTANICUS社との経済的・法律上の関係を断ち切ろうとしたことは明らかである。このため、知的財産及び商事裁判所は、原告がBOTANICUS社との経済的・法律上の関係を表面上有していないという事実だけでは、権利消尽の原則の適用を否定するものではないとの判決を下した。

この知的財産及び商事裁判所の判決は、前述の最高裁判所の判決をさらに発展させたものと見なすことができ、並行輸入業者にとって有利な判決であることは間違いない。この事件は第二審(知的財産及び商事裁判所)に上訴されたようで、第二審裁判所が原判決を維持するかどうかは今後の展開に目を向ける必要がある。