商品外観が、著作権法によって保護される「美術著作物」に該当するか否か、また、公正取引法によって救済可能か否かについて、台湾の実務において、これまでは統一された見解がなかった。近頃、台湾の知的財産及び商業裁判所(以下、「知財裁判所」)は、114年度民著訴字第89号案件(以下、「本件」)において、これらの議論に対しさらなる解釈を示した。これは、注目すべき発展である。
本件の原告である「後台集創有限公司」(以下、「原告」)は、後述の表に示すようなバックパック(以下、「原告商品」)の外観について、原告が自らの美的感覚で創作したものであると主張した。原告商品は、ロープ、調節ボタン、バッグの開口部構造、ドローストリングなどの要素を組み合わせることで、登山やキャンプのイメージを醸し出したものであるため、原告は、これは著作権法によって保護されるべき美術著作物に該当すると主張した。
一方、被告である「威整合運動股份有限公司」(以下、「被告」)は、原告の同意を得ないまま、「CHALLENGE TAIWAN」トライアスロン大会において、参加者に後述の表に示したようなバッグ(以下、「係争商品」)を配布した。原告は、両商品を比較した上、係争商品が原告商品に酷似しており、原告の著作権を侵害していると主張した。また、原告商品と係争商品は、同じくスポーツ層を販売対象としており、市場を共有しているため、被告の前記行為は消費者に混同誤認を生じさせる恐れがあり、公正取引法に違反するものであると主張した。したがって、原告は、著作権法、民法および公正取引法等の規定に基づき、被告に対して本件訴訟を提起し、損害賠償を請求した。
これに対し被告は、原告商品のデザインを模倣したことを否認し、原告商品はあくまでも量産品であり、そのサイズ、空間、ショルダーストラップ、全体的な設計はいずれも市場でよく見られるものであって、著作物としての創作性がないため、著作権法で保護される美術著作物に該当しないと反論した。また、被告は、係争商品は単に贈呈品であり、販売により利益を得たわけではないため、両商品は同一の市場にあると言えず、原告の商誉に便乗する不正競争行為は存在しないと抗弁した。
知財裁判所は、以下の理由によって原告の請求を棄却した:
- 美術著作物は、美術技法を表現したもの、または美術技法により思想や感情を表現したものであるべき:
美術著作物とは、美感を特徴として思想や感情を表現した創作である。美術技法により思想や感情を表現したものではない場合、あるいは美術技法を表現したものではない場合、美術著作物に該当しない。商品の実用的な形状は、産業上利用できるものであるが、それが美術技法を表していないのであれば、美術著作物として保護すべきではない。商品の形状が、(商品の)機能そのものを発揮するのに必要なものであるならば、それは単に物に応用された具体的な形状設計に過ぎないと言える。
したがって、実用的な技術性や機能性を発揮するための形状や設計は、美術技法により思想や感情を表現したものではなく、著作権法で保護すべき美術著作物に該当しないと裁判所は示した。
- 原告商品の外観設計は、実用性.機能性に基づいたものであり、美術技法によって思想や感情を表現したものではない:
原告商品の外観は長方形で構成され、正面にはカーキ色のカバー、内部には隠し式のファスナー、中央部には袋状の構造、下部の左右にはそれぞれ銀色の円形バックル、底部の左右にはそれぞれ固定された弾性ドローストリング、頂部には固定された三角形のウェビングループ、左右にはそれぞれバックルが備わっている。これらの要素が、ショルダーストラップおよび着脱式チェストストラップと組み合わせるために設計されたものである。
裁判所は、原告商品における全体的なデザインと設計の主な目的は、持ち運ぶ際の便利性とバッグ商品としての実用的な機能を発揮するためであり、美術技法により思想や感情を表現するためではないと判断した。また、長方形のバッグにショルダーストラップや着脱式チェストストラップを組み合わせるデザインは、市場においてありふれた形態であり、著作権法における美術著作物に該当しないと裁判所は判断した。

- 原告は、原告商品のデザインが消費者に広く周知されていることを証明できていない:
原告は、被告が大会参加者に贈った係争商品の外観と設計は、原告商品を模倣したものであり、公正な競争秩序を乱すものであると主張した。しかし、「長方形のバッグにショルダーストラップおよび着脱式チェストストラップを組み合わせたバッグの形状デザイン」は、市場においてありふれた形態であり、原告が独自に創作したものではない。したがって、裁判所は、前述の表に示したようなバッグの形状が、原告商品の「著名な表徴」であると認めるに足りるか否かについては、依然として疑問の余地があると判断した。また、原告は、当該バッグの形状が関連事業者や消費者に広く周知されていることについて立証していないと裁判所は指摘した。
さらに、係争商品の正面には、大会のイベントロゴが明瞭に表示されており、被告が誤認混同を生じさせ、あるいは原告の努力の成果を不当に搾取するような不正競争行為を行ったとは認めがたい。したがって、裁判所は、被告に公平取引法第25条違反の行為があったとする原告の主張は、いずれも根拠を欠くものであると結論付けた。
以上の通り、本件は、商品の外観が第三者に模倣されたケースにおいて、単に「相手方の商品の類似性」を理由に著作権法や公正取引法に基づいて主張しようとするには、現在でも困難であることを再び示した。それは、商品の外観が実用性や機能的な考慮から設計されたものであり、かつ市場においてありふれた形状である場合、美術著作物としての権利侵害や不正競争を主張することは難しいためである。
権利者側の戦略としては、異なる知的財産権(例えば、商標権や意匠権など)を活用すること、そして市場において商品の知名度を確立することなどが挙げられる。これによって、権利者の権利範囲を、商品外観においてより特定な設計要素(例えば、模様や色など)に集中させ、権利行使の成功率をより高めることができると考えられる。
-----------------------------------------------------------------------
本ウェブサイトのご利用に当たって、各コンテンツは具体的事項に対する法的アドバイスの提供を目的としたものではありませんことをご了承下さい。