専利法第121条第1項の規定によれば、設計とは、物品の全部又は一部の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合について、視覚を通じて訴える創作をいう。
また、専利法施行細則第53条は、設計専利の図面について、主張する設計の外観を十分に開示するに足る図面を備えなければならず、設計が連続する平面である場合には、単位図を含めなければならないとも規定している。
ここでいう図面には、斜視図、正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、底面図、単位図、その他の補助図が含まれる。
したがって、単位図は繰り返される単位の具体的特徴を表現し、登録を受けようとする設計の外観を明確かつ十分に開示し、当業者に当該平面設計がいかに連続展開されているかを理解させ、それに基づき実施できるようにするためのものである。
しかし、専利審査基準においては、単位図について、連続平面設計の創作性(創作非容易性)の判断との関係を直接的に示す記載は見当たらない。
では、単位図は、連続平面設計の創作性の判断において、どのような役割を果たすのであろうか。
この点について、設計専利権者(原告)が、台湾知的財産局(以下、「知財局」)による無効審判成立の処分及び訴願委員会による訴願決定を不服として、知的財産及び商事裁判所(以下、「知財商裁」)に提起した最近の案例から、その一端をうかがうことができる。
係争専利は「布地」に係る設計であり、その特徴は布地の模様がデジタル3Dプリントによってなされていることにある。
その模様は、主として、並列かつ位置をずらして配置された2つの六辺形からなり、相対的に低い位置にある六辺形の中央対角線の頂点から当該対角線と同じ長さの線分が上方へ伸び、相対的に高い位置にある六辺形の中央対角線の頂点から当該対角線と同じ長さの線分が下方へ伸びているものである。そして、各六辺形の内部にさらに一つの六辺形が設けられており、これらによって一単位が構成されている。
そして、この単位図を上下左右方向に連続して展開することにより、全体の模様が変化に富みながらも規則的な反復性を有する連続図面設計が形成されている。
無効審判請求人は、以下の登録商標図柄を引用証拠として提出し、その公開日が係争専利の出願日よりも前であることから、係争専利の先行技芸とすることができるとして、係争専利の創作性欠如を主張した。

これに対し原告は、係争専利の保護対象となる範囲は「平面図」であって「単位図」ではないことを主張した。また、知財局が引用した証拠の図柄と係争専利の単位図を比較することは明らかに誤りであり、設計専利の全体観察判断原則に反するとした。
そして、両者には以下の相違点が存在すると述べている。
- 係争専利の単位図は、2つの同じ六角紋様に1本の線分を付し、左右を反転させ位置をずらして配置した組合せで表現されており、引用証拠は全体的に4つの対称的な六角模様がひし形状に配置された組合せで表現されている(相違点1)。
- 係争専利は六角紋様の一端に1本の線分が連なっているが、引用証拠は両側の六角枠のそれぞれの相対する両端からそれぞれ1本の線分が連なり、中央の2つの六角枠の間が1本の線分で連なっている(相違点2)。
- 係争専利は六角枠と同じ六角の黒点で、両者の比率は大きな差があるが、引用証拠は、比率が近い丸点が六角枠の内部に充填されている(相違点3)。
さらに、引用証拠の図柄を調整変形して連続的に延伸・配列させたとしても、係争専利が呈する視覚的効果とは明らかに異なるため、係争専利は容易に想到し得るものではなく、創作性を有するとした。
知財商裁は審理を経て、以下のように認定した。
引用証拠の主要な図面と係争専利の単位図を比較すると、いずれも「ずらして配置した六辺形」、「中央対角線の頂点から上方又は下方へ延びる1本の線分」を含んでいる。
引用証拠の六辺形の内部には「墨色の円形」があり、係争専利の単位図の六辺形の内部に設けられた「墨色の六角形」とは、わずかに相違があり、内部の墨色円形と六角形外枠の間の線条の比率、位置と大きさの関係はやや異なっている。しかし、この部分の相違は、その全体設計に特異な視覚的効果を生じさせることはできない。
また係争専利は、証拠の図柄を応用して、線条の位置・間隔の比率を調整し、内部に幾何学図形を設けた簡単な修飾を施した上で、上下左右に連続して延伸配列展開して構成されるものに過ぎず、それにより形成された模様の配列の全体的な設計から言えば、引用証拠を全体的に配列させたものと異なる視覚効果を生じさせることはできない。
よって係争専利は創作性を欠いている。
また、原告の主張について、知財商裁は次のように述べている。
(1)係争専利の設計の特徴は、単一の面のみにあり、連続する平面の設計であることから、当該平面設計の単位図が含まれているはずである。また、係争専利の設計の説明欄には、「単位図を上下左右に連続して延伸展開することにより、全体の模様が変化に富みながらも規則的な反復性を有する連続図面設計が形成されている」と記載されている。このことから、係争専利の平面図は、単位図を上下左右に連続して延伸展開した連続図面設計であることがわかる。したがって、まず証拠と係争専利の単位図を比較し、そのうえで単位図から平面図の設計を推知することは、設計専利の実体審査基準の判断手法に反するものではない。
(2)係争専利の単位図と引用証拠の図柄はいずれも「二つの同一の六辺形に1本の線分を付し、左右を反転させ位置をずらして配置した組合せ」・「六辺形で、一端に線分が連なっている」という設計特徴を開示しており、原告が述べた相違点1・2は存在しない。そして、原告が述べた相違点3について、係争専利は六辺形の枠と同じ六角形の黒点で、両者の大きさの比率差は比較的大きく、引用証拠は比率が近い墨色の円点が六辺形の枠内に充填されている。よって、両者の相違は、六辺形枠内の幾何学図形の簡単な変更及び外枠線の太さ・位置の比率の簡単な修飾に過ぎない。このような簡単な修飾手法(すなわち、幾何学形状または位置比率のわずかな変更)は、やはり係争専利の全体設計に特異な視覚的効果を生じさせるものと言えない。
よって、原告の主張は採用できない。
上記内容から明らかなように、単位図は、登録を受けようとする設計を明確にして、連続する平面設計を十分に開示するために必要な図面の一つである他、反復する単位の具体的特徴を表現し、これをもとに上下左右に展開して全体的な平面設計の図柄とすることができる。このため、創作性を比較判断する基準単位として用いることもできるので、単位図は平面連続設計が専利権を取得できるか否かに関する重要な図面の一つであると言える。
一方、裁判所も先に単位図を比較してから単位図から連続平面設計を推知するという判断方式を認めている。よって、連続平面設計の専利性を判断する際、その単位図と先行技芸が区別できるか否か、そして特異な視覚的効果を生じさせる設計であるかが極めて重要となる。それらは、その上下左右に連続して延伸展開する連続図面設計の視覚的効果に影響を及ぼし得るからである。この点は、設計者が図柄を設計する際に、留意すべき事項である。