当所は以前、制御装置をプログラム可能にする方法専利の進歩性判断に関する、最高裁判所の111年度台上字第186号判決、113年度台上字第459号判決、ならびに最高行政裁判所の110年度上字第597号判決、113年度上字第132号判決といった、数回にわたって審理を知的財産及び商事裁判所に差し戻した判決について解説した。前述の上級裁判所の判決における、審理を差し戻した主な理由として、「主要引例」を特定しなければならないこと、専利出願時の当業者の技術レベルを考慮しなければならないこと、「could-wouldアプローチ」により「明らかに試みる意思がある」のか、または「明らかに実行する意思がある」のかを見極めることで、同業者が先行技術を組み合わせて発明を完成させる可能性や意欲があるかを判断しなければならないこと、競合他社に専利の実施許諾をしたことが商業上の成功という進歩性の判断要因の存在を意味するか、などが挙げられる。(このテーマについて、当所の2024年の記事、及び2025年の記事をご参照されたい。)
知的財産及商事裁判所は、2025年12月末に、この一連の事件に関し、二度目の差し戻し審の判決として、民事判決(113年度民専上更二字第5号)および行政判決(114年年度行専更二字第1号)を同時に言い渡した。この二つの判決の理由は類似しており、いずれも前述の上級裁判所が示した差し戻しの理由の要点に基づいている。当該専利出願時の技術レベルについて、裁判所は、被疑侵害者が提出した専門家証人の意見書および専門家証人の証言を進歩性判断の根拠として採用した。なお、引例の組み合わせによる進歩性の判断に当たり、裁判所はまず、主要引例と二次引例を特定し、当該専利と主要引例と技術的特徴の相違点を比較し、それらの相違点が二次引例に開示されていると認定した。なお、引例を組み合わせる動機付けについて、裁判所は以下の通り判断した。まず、各引例が当該専利の技術分野と関連性があり、解決しようとする課題、機能、または効果が共通している。当業者であれば、主要引例の技術的内容に基づいて制御装置をプログラム化することができるため、一定の条件が揃った状態では二次引例の技術を使用する意欲があることが明らかであり、単に後知恵で先行技術を組み合わせたのではない。したがって、裁判所は、再び当該専利が進歩性を欠くと判断した。
専利の実施許諾をしたことが商業上の成功を意味するかどうかに関して、知的財産及び商事裁判所は、今回の民事訴訟事件と行政訴訟事件の二度目の差し戻し審において、当初の専利実施許諾契約を検証するのみならず、双方当事者での合意を経た質問を記載した書簡を当該専利の被許諾者に送付した。裁判所の質問は、専利出願に存在する技術的課題が何か、専利の請求項の技術的内容がその技術的問題を解決し得るかどうか、実施許諾契約が請求項の技術的内容に基づいて締結されたかどうかなど、被許諾者が当時許諾を取得した理由が何かに焦点を当てた。被許諾者の多くは、長い年月が過ぎたため把握できないと回答した。一部の被許諾者は、当該専利が当時の技術的問題を解決できるものであったと返答したが、許諾が行われた背景が当該専利の技術的内容に基づいていたかどうかは確認できなかった。故に、裁判所は、当時の実施許諾契約からは、被許諾者が許諾を取得した理由が請求項の技術的特徴によるものであるかが確認し難いとし、専利権者が専利許諾と専利の技術的特徴との間に直接的な関連性があることを立証できなかったと判断した。
専利の進歩性判断に関して、最高裁判所および最高行政裁判所は、下級裁判所が「主要引例」の特定に注意を払い、専利出願時の当業者の技術レベルを考慮した上で、「could-wouldアプローチ」を用いて組み合わせの動機付けの有無を判断し、商業上の成功等の二次的要因を考慮すべきであると、判決の中で繰り返し指摘している。これら上級裁判所が審理を差し戻す理由となり得る進歩性に関する留意点は、現在では知的財産及び商事裁判所が審査を行う際のチェックリストとなっている。そのため、訴訟のいずれの当事者にとっても、特許の有効性を争う際に、事前に準備を整え適切に対応するための重要な指針となっている。
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