台湾商標法第63条第1項第2号の規定によれば、商標登録後、正当な理由なく未使用の状態が続いているか、または継続して3年以上使用を停止している場合、その登録は不使用取消にされるリスクがある。
「正当な理由」とは、商標権者が事実上の障害や、自己の責めに帰することができない事由により、指定商品について登録商標を使用して生産、加工、選別、卸売、または取扱を行うことができないことを指す。例えば、海上輸送の途絶、原料の不足、あるいは天災と地変などによって、工場や機械に重大な損害が生じ、一時的に生産や販売が不可能となった場合などのことが挙げられる。
また、「自己の責めに帰することができない事由」とは、客観的な基準に従い、通常人に要求される程度の注意をもってしても予測不可能または回避不可能な事由を指す。単に主観的な立場での「自己の責めに帰することができない事由」がある場合は、これに含まれない。この点については、参照すべき判例が多数ある。
先日、台湾の知的財産及び商事裁判所(以下「知財商裁」という)と最高行政裁判所は、前述の「正当な理由」に関して判決および裁定を下した。これらの事例を通じて、裁判所の最新の判断姿勢をうかがい知ることができる(知財商裁113年度行商訴字第50号、2025年4月7日言渡。最高行政裁判所114年度上字第380号決定、2025年12月24日言渡)。
本件において、係争商標の登録第00170842号「
」は、第41類の「ナイトクラブ、キャバレー、ダンスホール」等のサービスを指定して登録されたものである。
2023年2月8日、第三者が係争商標には継続して3年以上の不使用があるとして、その登録の不使用取消審判を請求した。商標権者が商標法の規定に適切な使用証拠を提出できなかったため、知的財産局は取消審決を下した。
これに対し、商標権者は行政不服申し立てとしての訴願ないし行政訴訟を提起した。
本件訴訟において、商標権者は、下記の通りに主張した。
もともと係争商標はレストランサービスを提供しており、当該レストランは「亜太会館」の内部に設置され、実際に営業していた事実があり、本件の使用証拠になりうるが、亜太会館がのちになり諸事情により閉店・撤去されてしまったため1、係争商標のレストランはやむを得ず営業を停止し、建物が取り壊されたので立ち退いた。これは係争商標の使用停止における事実上の障害であり、商標権者の責めに帰することができない事由に該当するため、正当な理由のない使用停止というわけではない。そして、ここ数年、新たなレストランの開設の準備を始めており、商標権者には係争商標を計画的、準備的かつ企画的に使用する意向がある。
この「正当な理由」の主張に対し、知財商裁は審理を経て次のように判断した。
亜太会館が閉店・撤去により営業を停止したとしても、商標権者が係争商標で新たなレストランを開設する計画があったとしても、レストランは所詮「ナイトクラブ、キャバレー、ダンスホール」のサービスとは異なる。さらに、係争商標の使用態様は実店舗でのサービス提供に限らず、マーケティングの目的で係争商標を「ナイトクラブ、キャバレー、ダンスホール」のサービスに関するものに使用することや、グラフィック、デジタル映像、電子メディア等の媒体を利用して、関連消費者に商標として認識させる行為も含まれる。本件において、商標権者が係争商標を使用しなかったのは、自身の状況に基づく判断であり、自発的な戦略決定にすぎない。したがって、自己の責めに帰することができない事由には当たらず、商標法第63条第1項第2号にいう「正当な理由」には該当しない。
商標権者はこれを不服として最高行政裁判所に上訴したが、最高行政裁判所も知財商裁の見解を維持し、最終的に係争商標の取消が確定された。
2020年、新型コロナウイルスの影響により、各国政府は感染拡大を防ぐため、ロックダウンを実施した。これにより、現場でのサービスを提供する多くの商標権者が営業を停止せざるを得なかった。このようなロックダウンの政策が商標法上の商標使用停止における「正当な理由」を構成するか否かについて、活発な議論が巻き起こった。
前述の判決が示している通り、実店舗の営業場所においてサービスを提供できない状況であっても、商標権者はデジタル映像、電子メディア、またはその他の媒体を通じて、関連消費者に商標として認識させる行為を続けることが可能である。したがって、この見解に基づき、ロックダウンの政策のみを理由として、商標使用停止の「正当な理由」と認めさせることは困難であるように考えられる。
1 亜太会館は台北市に位置し、1999年に開業した。ビジネス向けの賃貸住宅とシティクラブを兼ね備えた施設であり、本格的な上海料理で知られるレストラン「霞飛路八號」も同施設内に設置されていた。亜太会館は2012年に閉業した。
出典:https://udn.com/news/story/120910/7776525(最後閲覧日、2026年3月23日)