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スキニーラベル戦略における特許侵害との境界線-近年の後発医薬品(ジェネリック医薬品)の適応症除外に対する裁判所の見解

    台湾専利法は特許権存続期間延長制度により、医薬品関連特許において、医薬品にかかる許可証申請(承認取得)のために発明を実施できない期間を補償している。そしてこの制度により、延長される特許権の範囲につき、専利法第56条は、「専利主務官庁により存続期間の延長が認められた特許権の範囲は、許可証に記載の有効成分及び用途により限定された範囲にのみ及ぶ」と規定している。言い換えると、延長された特許権の保護範囲は、特許査定により公告された特許請求の範囲全体に及ぶものではなく、許可証に記載された有効成分と用途に係る範囲のみとの制限を受けるものである。

    一方、台湾の薬事法では、既にパテントリンケージ制度が導入されており、新薬の特許情報開示メカニズムにより、後発医薬品(いわゆるジェネリック医薬品)の承認過程において、関連する先発医薬品(以下、新薬)の特許侵害有無の審査プロセスをリンク付け、後発医薬品が承認される前に、潜在的な特許侵害紛争に、事前に対応することが望まれている。現在の医薬品の登録実務では、後発医薬品の許可証に記載される適応症から特許で保護されている新薬の適応症を除外することが認められている(薬事法第48条の20、第2項)。このような、特定の適応症を除外する手法は、実務上、虫食い申請(carve-out)とも呼ばれており、適応症の一部を除外した添付文書(説明書)は、スキニーラベル(skinny label)とも呼ばれている。

    しかし、後発医薬品メーカーがスキニーラベル戦略を採用すれば、それだけで、特許侵害の懸念を排除できるかについては、更なる検討が必要である。特に、後発医薬品の臨床現場での使用過程における、医師の「適応外使用(オフラベル使用)」の新薬特許権存続期間延長範囲への該当や、このような特許侵害の発生を防止・回避するための作為義務を、後発医薬品メーカーが負うべきかについては、実務上、議論の余地がある。

    この問題については、最近、異なる後発医薬品をめぐる関連訴訟において、複数の裁判所が類似した見解を示している。中でも、知的財産及び商業裁判所の2024年度第25号判決(2025年9月)、および最高裁判所の2025年度第1159号判決(2025年10月)はいずれも、スキニーラベル戦略と特許侵害との境界を明確に示すものであり、参考に値する。

    原則として、これらの判決はいずれもスキニーラベル戦略の合法性を認めている。裁判所は、後発医薬品メーカーは、薬事法および医薬品許可証審査登録に関する審査基準の関連規定に基づき、後発医薬品の許可証申請に際して、新薬の特許権存続期間延長の対象となる特定の適応症を除外しており、この場合、添付文書に記載された適応症の範囲内で後発医薬品を製造・販売・使用する限り、原則として新薬に関連する特許権の侵害に該当しないとの見解を示した。ただし、実際の医療上の使用において後発医薬品の添付文書に記載された適応症と、除外された新薬の特許権に係る適応症とは、臨床診断・治療実務において明確に区別されるものでなければならないことを同時に強調した。仮に、医療実務において、その区別が困難であることにより、後発医薬品が、実質的に特許権存続期間延長により保護されている用途に使用されることになれば、依然として特許侵害となる恐れがある。

    適応外使用(オフラベル使用)に関しては、裁判所は、次のような見解を示している。

    台湾の国民健康保険の給付に関する関連規定を考慮した上で、医師が医薬品の添付文書に記載された適応症に基づき処方を行うことは、臨床における医薬品使用の原則かつ常態であり、これに対し、適用外使用は、法令上定められた特定の要件を満たす場合に限り、例外的に許容される医療行為である。従って、医師が、専門的判断と医療行為の自律性に基づき、後発医薬品を、添付文書に記載されていない、または後発医薬品メーカーが除外した新薬の特許権に係る適応症の範囲内で使用したとしても、原則として、その行為を後発医薬品メーカーに帰責することは難しく、特許権の直接的または間接的侵害に該当することはなく、また、医師による添付文書外使用を防止する作為義務を後発医薬品メーカーが負うものとは認められない。特に、後発医薬品メーカーによる後発医薬品の製造・販売行為と、医師の実際の適用外使用の処方行為の有無には、医師の個々の医療判断、健康保険給付審査、患者の服薬選択や自己負担の意思など、多くの不確定要素が介在している。したがって、適応外使用により、最終的に後発医薬品が特許権で保護された用途に使用されることとなったとしても、それは、単なる「条件関係」や「事実上の因果関係」にすぎず、侵害責任の成立に必要な「相当因果関係」には至らず、客観的に見て、特許権の直接侵害や、誘導・幇助等の間接侵害を構成するには不十分である。

    以上の判決概要から、後発医薬品メーカーのスキニーラベル戦略の採用が、特許侵害を構成しているか否かの判断において、裁判所は、台湾の健康保険給付基準と実務における運用状況考慮し、さらに、後発医薬品の添付文書に記載された適応症と、除外された新薬の特許権に係る適応症とが、臨床診断・治療実務において明確に区別が可能であり、かつ医療的にの合理的であるかを精査していることがわかる。

    裁判所はまた、後発医薬品の許可証申請段階では、将来、医師が当該後発医薬品を適応外使用するか否かについては、多くの不確定要素が関与しており、事前に具体的に予見することは困難である点にも言及している。このため、適応外使用の可能性が存在するという理由だけで、後発医薬品メーカーの侵害責任を問うことについては、裁判所は、慎重かつ保守的な姿勢を示している。しかしながら、将来的に、実際の処方データ、市場での行為やその他の具体的な証拠から、後発医薬品メーカーが、後発医薬品の適応外使用に対し、高度に予見可能であったこと、あるいは積極的な誘導行為を行ったことが立証された場合、裁判所の侵害帰責及び因果関係に関する判断に変化が生じる可能性も否定できず、今後の動向を引き続き注視していく必要がある。

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