台湾の専利法施行細則第19条第4項によると、複数の技術的特徴を組み合わせた発明において、当該技術的特徴は「ミーンズ・プラス・ファンクション」(手段+機能)、または「ステップ・プラス・ファンクション」(工程+機能)で表現することができる。これらの技術的特徴を解釈する際には、明細書に記載された当該機能に対応する構造、材料、または動作、ならびにその均等範囲を含むものとされる。台湾知的財産局は、米国特許法第112条第(f)項(旧第112条第6項)の規定、および米国の審査実務を参照しており、請求項の記載が以下の三条件を満たす場合、「ミーンズ・プラス・ファンクション」、または「ステップ・プラス・ファンクション」の表現であると認める旨を専利審査基準に規定している。
- 当該技術的特徴が「…のための手段」または「…のための工程」という用語を用いて説明されている。
- 当該用語が特定の機能を記載している。
- 当該用語において、その特定の機能を達成するに足りる、完全なる構造、材料、または動作が記載されていない。
台湾の知的財産及び商事裁判所が2025年10月15日に下した114年度行専訴字第16号行政訴訟判決は、請求項に係る技術的特徴が「ミーンズ・プラス・ファンクション」に該当するか否かに関するものである。問題となっている専利は、台湾発明専利(特許)第I629025号(以下、本件専利という。)であり、その技術的内容は、サーバーに応用可能なスライドレールアセンブリである。本件専利に係る無効審判において、請求人は本件専利の進歩性を否定するため、複数の引例を提出した。審理後、知的財産局は、すべての請求項について進歩性を欠くとの判断を下した。専利権者は訴願を提起したものの棄却されたため、行政訴訟を提起するに至った。
公開されている情報によれば、専利権者は無効審判の段階では「ミーンズ・プラス・ファンクション」に関する抗弁を主張していなかった。しかし、その後の訴願および行政訴訟において、本件専利の一部の技術的特徴は「ミーンズ・プラス・ファンクション」として解釈されるべきであると主張した。専利権者は、これらの技術的特徴の記述には「…のための…」という文言が含まれ、一定の機能のみが記載されて構造の記載がないことから、上記の審査基準の規定に合致すると主張した。これに対し、知的財産及び商事裁判所は、本件を審査した結果、本件専利の明細書における先行技術の記述において、従来のスライドレールアセンブリが同一の機能を備え、その機能を実現するための構造を有している旨も既に記載されていたと判断した。これにより、当業者は専利出願前に、当該機能を実現するための構造を既に認識していたはずである。したがって、本件専利の請求項に係る技術的特徴は、当該機能を実現するための構造が既に記載されており、上記の条件3の要件を満たさず、「ミーンズ・プラス・ファンクション」には該当しないと判断された。
さらに、知的財産及び商事裁判所は、専利権者による「ミーンズ・プラス・ファンクション」に係る主張を認めれば、請求項1が明細書に記載された最小限の実施態様に限定解釈されてしまうと指摘した。この場合、請求項1の従属項で付加された技術的特徴は請求項1に既に記載されたと同然になり、このような技術的特徴の記載の重複は、専利法第26条第2項に規定される簡潔性要件に抵触する。また、こうした解釈によれば、従属項と請求項1との差異が無くなり、クレーム差別化の原則(Doctrine of Claim Differentiation)にも反する。したがって、知的財産及び商事裁判所は、これらの技術的特徴が「ミーンズ・プラス・ファンクション」に該当するという専利権者の主張を退け、本件専利は引例に基づき進歩性を欠くものと判断した。
上記の説明からわかるように、知的財産及び商事裁判所は本件において、当業者が出願前の通常の知識(例えば、明細書における先行技術に関する記載)を参酌し、請求項の記載から構成要件の完全な構造を知得できる場合、当該請求項には構成要件の構造が記載されているとみなすべきであるとの見解を示した。さらに、知的財産及び商事裁判所は、請求項の従属関係に基づき、技術的特徴を「ミーンズ・プラス・ファンクション」と解釈すれば、簡潔性要件及びクレーム差別化の原則に違反するかどうかを検討することで、解釈の合理性を判断した。
技術的特徴が「ミーンズ・プラス・ファンクション」と解釈される場合、専利権の範囲が明細書に記載された具体的な構造の範囲内にまで限定解釈されてしまうため、通常、専利権者が自らこの解釈を積極的に希望することは稀である。しかし、専利の有効性が争われ、専利権の範囲を狭める戦略を採る必要がある場合、本件のように「ミーンズ・プラス・ファンクション」としての解釈を試みるほかに、代替案として、専利権者は無効審判の手続きにおいて、請求項を訂正できる機会にも留意すべきである(本件専利の出願手続きにおいて専利権者は訂正を請求したが、当該訂正は前述の「ミーンズ・プラス・ファンクション」に係る技術的特徴や構造には関係しない)。
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