台湾知的財産局が発行した専利権侵害判断要領(『專利侵權判斷要點』)3.2.2.1によると、被疑侵害対象と係争設計専利の全体外観が同一又は近似であるかを比較・判断するときには、一般消費者が商品を選択購入する観点で“全体を観察し、総合的に判断”して侵害比較をすることになっている。
そして、それぞれの設計特徴の違いが全体の視覚印象に与える影響を総合的に考慮し、「一般消費者の注意を引きやすい部分又は特徴」を重点として、「係争専利における明らかに先行意匠と異なる設計特徴」、「正常の使用時に見やすい部分」に、その他の設計特徴を合わせて、外観全体の統合的な視覚印象を構成し、被疑侵害対象と係争専利の差異が被疑侵害対象の全体の視覚印象に影響を与えるに足るかを判断することとなる。。
それはすなわち、外観が近似か否かの判断が、消費者の注意を引きやすい部分や特徴を重点とし、さらにその他の設計特徴を合わせて、外観全体の統合的な視覚印象を構成し、その上で外観の差異が混同を生じさせるか否かを判断するということである。
よって、その他の設計特徴が部分的な差異のみである場合、消費者の注目を集めやすい部分や特徴が、外観の視覚的な差異においてカギとなる役割を果たすが、どのような視覚的に顕著なポイントである設計特徴がカギとなるのかについて、最近の知的財産及び商事裁判所(以下、「知財商裁」)の設計専利侵害案件において垣間見ることができる。
また、自然動物界の模様に近似の形態を、専利の設計の特徴とすることができるのかについても、本件において裁判所が意見を提示している。
一、係争専利の設計の内容
係争の台湾第D153928号設計専利は「ウォーターガングリップ」のデザインであり、その外観には縦方向に延伸するアーク柱状のグリップ本体が含まれ、グリップ本体両端の出水口と入水口が連通するように構成されている。
その創作の特徴について、斜視図と左側面図から見ると、該グリップ本体は、多数のアーク状の長尺断面溝と短尺断面溝により装飾されている。その内、該グリップ本体の前側は、2本の長尺断面溝の間に1本の短尺断面溝が組み合わされており、多数の装飾部を形成するように定義されている。そして、この装飾部はグリップ本体の前側から後ろ側中央に向かって延伸集約され、視覚的にはヒョウ柄やゼブラ模様のような独特なデザイン効果を引き出している(係争専利の意匠の創作説明欄を参照)。

二、係争製品の設計内容
係争製品は8段式多用途ウォーターガン製品であり、そのグリップ外観は縦方向に延伸してアーク柱状のグリップ本体が含まれ、斜視図と左側面図から見ると、該グリップ本体は、多数のアーク状の長尺断面溝と短尺断面溝により装飾されている。その内、該グリップ本体の前側は、2本の長尺断面溝の間に1本の短尺断面溝が組み合わされており、多数の装飾部を形成するように定義されている。背面図から見ると、この装飾部はグリップ本体の前側から後ろ側中央に向かって延伸集約され、全体的な視覚効果としてヒョウ柄やゼブラ模様デザインとなっている。

三、係争専利と係争製品の外観の比較判断
知財商裁は、係争製品と係争専利をそれぞれ比較し、両者はいずれも以下の特徴を有すると認めた。
A「縦方向に延伸してアーク柱状のグリップ本体」
B「該グリップ本体の前側は、2本の長尺断面溝の間に1本の短尺断面溝が組み合わされ、多数の装飾部を形成するように定義されている」
C「該装飾部はグリップ本体の前側から後ろ側中央に向かって延伸集約されている」
D「全体的な視覚効果として、ヒョウ柄やゼブラ模様のような装飾部が表されている」
そして、両者には次の差異特徴があるとした。
E「係争専利のグリップ本体前側には3つのアーク凸状外観が表され、係争製品のグリップ本体前側には4つのアーク凸状外観が表されている」
特徴Eについて、両者は該グリップ本体の前側のアーク凸状外観においてわずかな違いはあるものの、一般消費者が商品の選択購入をする観点で、全体を観察して総合的に判断すると、そのわずかな違いは全体の視覚効果に影響を及ぼすには足らないとした。そして、係争製品は係争専利のすべての設計特徴を備えてもいるため、係争製品は係争専利と混同する視覚印象を生じさせ、係争製品と係争専利の外観は近似であるとした。
これについて、被告は次のように弁明した。
「係争専利のグリップで横向きの紋様を用いているのは、該グリップが手持ち式のウォーターガンに用いられることから、使用時にウォーターガンを落とさないようウォーターガンと手のひらの摩擦力を上げるためである。このため、横向きの紋様設計は当業者が出願前の先行意匠により容易に思いつくものである。
また、係争専利が以前から横向きの紋様のグリップ設計をしているのは、自然界のヒョウ柄・ゼブラ模様といった動物の形態を模倣して用いたもので、先行意匠の転用、置換、組み合わせ等の簡易な設計手法で専利を受けた設計をしたことは、明らかに創作性を備えていないとも言える。」
そして、証拠(設計専利第D123935号等)を挙げて、それらの証拠も同様に長短尺の溝が交錯している等とも弁明した。
この答弁に対し、知財商裁は以下のように認めている。
「これらの証拠には、係争専利のように長短尺の断面溝を組み合わせて複数の凹溝装飾部を形成したものが開示されておらず、この立体模様は自然動物界のヒョウ柄やゼブラ模様の形態を直接模倣したり直接転用しただけとは言えない。また、公知の模様を簡単に置換・組合せをした設計手法に過ぎないとも言えない。
係争専利の『長短尺の断面溝の組合せ』という主な設計特徴は、修飾・変化及び再構築によるものであり、その全体的外観に特異な視覚効果を生じさせることができ、容易に思いつくものであると認めるべきではない。
したがって、被告が述べた係争専利が先行意匠の模倣・転用・置換・組合せ等の簡易な設計手法で完成するものであるなどの弁明は採用できない。」
上記の内容から、係争専利の長短尺断面溝の設計及び配置方式には、先行意匠と区別できる点があることが分かる。そして、これらの特徴を「通常の使用時に目につきやすい部分」に設けることで、一般消費者の注目を集めやすく、全体の視覚印象を左右する重要な要素となるのであり、他の部分の外観設計に特徴があったとしても、その重みは小さく、全体の視覚印象に与える影響も小さく、全体の視覚印象を大きく変えることができない可能性が高いと言える。
本件は、将来的に改良や設計創作を行う際に、一般消費者の注意を引きやすい部分の設計改良や創作が、原設計の全体の視覚印象に差異を生じさせることができない場合、専利を受けることができなかったり、専利権侵害に陥ったりするなどの可能性を排除できないのだと、関連業界人や関連製品の外観設計者に注意喚起をしている。
またその一方で注目すべき点は、自然動物界の模様の形態が、直接的な模倣・転用・置換・組合せでなく、修飾・変化及び再構築により、全体的な外観に特異な視覚効果を生じさせることができるものであれば、やはり設計専利の保護を受ける特徴になり得るということである。