2025年5月29日、台湾知的財産及び商事裁判所(以下、「知財商裁」)は、アメリカのアップル社に有利な判決を下した(113年度行商訴字第65号判決)。
これにより、被告機関である知的財産局(以下、「知財局」)がアップル社に対して下した「SIDECAR」商標登録出願の拒絶処分が法律違反であると判断され、知財局の拒絶処分が取り消され、アップル社の商標登録を認めるよう命じられた。
一、案件背景
アップル社は、2019年11月21日に知財局に「SIDECAR」商標(以下、「係争商標」)を、第9類を指定商品として出願した。
審査の過程で、アップル社は指定商品の範囲を「コンピュータソフトウェア」にまで減縮したが、知財局は係争商標がイギリスのAlfred Dunhill Limited会社(以下、「Dunhill社」)が既に登録している「SIDECAR」商標(登録番号:01104140、以下「140号商標」)と類似しており、混同誤認を生じる可能性があると判断した。そのため、商標法第30条第1項第10号に基づき、係争商標の登録を拒絶した。
アップル社はこの処分の不服申立てを行ったが棄却されたため、知財商裁に訴訟を提起した。
二、知財商裁の審理
本件において混同誤認の有無を判断する上での重要なポイントの一つは、係争商標の指定商品と140号商標の指定商品が類似しているかどうかであった。
知財局は、140号商標の指定商品に「ノートパソコン専用バッグ」が含まれており、それを係争商標の指定商品「コンピュータソフトウェア」と比較すると、両者ともにコンピュータに関連し、コンピュータの利便性を向上させるものであると判断した。また、世の中にはコンピュータソフトウェアとコンピュータ専用バッグを同時に販売する販売業者が存在するため、知財局は販売ルートにおいて「コンピュータソフトウェア」と「ノートパソコン専用バッグ」は関連性があり、類似商品に属すると判断した。
しかし、知財商裁は審理を経て、以下のように認めている。
商品の類似性を判断する際には、機能、材料、生産者、取引慣行などの要素を総合的に考慮すべきである。
係争商標の指定商品「コンピュータソフトウェア」は、無形の指令とデータに関わるものであり、コンピュータ自体はハードウェアであるため、両者は同じものではない。一方、「ノートパソコン専用バッグ」は、コンピュータを持ち運ぶ際に衝撃吸収や緩衝などの保護機能を有するものであり、その原料は革、布、プラスチックなどが多いため、機能、用途、材料の点において「コンピュータソフトウェア」とは全く異なるものである。また、消費者の使用習慣においても、「ノートパソコン専用バッグ」と「コンピュータソフトウェア」は互いに補完関係にない。
上記に基づき、知財商裁は両者が類似しない商品であると判断した。
さらに、「ノートパソコン専用バッグ」と「コンピュータソフトウェア」を同時に販売する業者が存在することについて、知財商裁は、これは消費者が商品を購入しやすいように考慮したものであり、商品自体の性質が補完性を持つかどうかとは異なるため、両商標の商品が類似性を有するという知財局の判断は適切ではないと述べた。
以上のことから、係争商標と140号商標が同じ文字を使用しているものの、両者の指定商品が類似しないこと、それぞれが商標識別性を備えること、アップル社が善意に基づいて出願したこと、そしてDunhill社が主に衣料品、財布、バッグなど商品を扱っていることなどの要素を踏まえて、知財商裁は、アップル社の係争商標の登録が、消費者にDunhill社の140号商標との出所について混同を生ずるおそれはないと判断した。
そして、智財局の登録拒絶処分を取り消し、アップル社に有利な判決を下した。
三、本件の留意点
本判決は、商品間の関連性があるかどうかを判断する際に、商品の機能が互いに補完的であるかどうかを分析する必要があるという点を明確にした。
これは、消費者の利便性を考慮して組合せ販売をしている状況と区別すべきであることを意味しており、今後の商品類似性判断基準の緻密化において、本判決は非常に参考になるものと考える。