台湾において、専利侵害訴訟が提起された場合、被告は訴訟手続きで無効抗弁をすることができるほか、知的財産局に無効審判を請求することもできる。弊所の先般の記事に述べられた事件は、まさにこの制度の特徴を示している。その事件における被告が民事訴訟で専利の無効抗弁をしたところ、一審と二審裁判所がいずれも原告(専利権者)の専利に進歩性がないと判断したほか、無効審判においても、知的財産局が専利の有効性について審理した結果、審判の請求が成立した。
そして、民事訴訟においては、専利権者が最高裁判所に上告したところ、最高裁判所は111年度台上字第186号判決、及び113年度台上字第459号判決で、専利に進歩性がないとした二審判決を二回に渡って破棄し審理を二審裁判所に差し戻した。最高裁判所はその判決で、二審裁判所(知的財産及び商事裁判所)が当業者の技術レベルについて調査しておらず、専利権者が他者に専利の実施許諾をすることができたことが商業上の成功を意味するかを考慮に入れていないと繰り返し強調した。弊所の先般の記事で示されたとおり、最高裁判所は113年度台上字第459号判決で、下級裁判所が複数の引例を組み合わせることで専利の進歩性の有無を判断する際、主要な引例がどちらかをまずは定義しなければならないとしたほか、欧州のCOULD-WOULDアプローチを参考にして、進歩性の判断を行う際に当業者が先行技術を参酌して発明の内容を完成する可能性や意欲があるかを考慮してもよいと指摘した。
また、無効審判に係る行政訴訟においては、最高行政裁判所も同様に、専利に進歩性がないとした知的財産及び商事裁判所の判決を二回に渡って破棄し、審理を原審に差し戻した。最高行政裁判所は、2022年10月13日の110年度上字597号判決で、知的財産及び商事裁判所が当業者の技術レベルについて調査しておらず、専利権者が他者に専利の実施許諾をすることができたことが商業上の成功を意味するかについて専利権者が提出した各証拠を考慮に入れていないと指摘し、審理を知的財産及び商事裁判所に差し戻した。しかし、一回目の差し戻し審において、知的財産及び商事裁判所は依然として専利権者の専利に進歩性がないとの判決を下したため、専利権者は再度上告したわけである。
今回の上告について、最高行政裁判所は2025年1月15日に、113年度上字第132号判決で再び審理を知的財産及び商事裁判所に差し戻した。最高行政裁判所はこの判決を通して、知的財産及び商事裁判所が当業者の技術レベルについて充分に調査しておらず、複数の引例のうちどちらが主要引例であるかも定義していないと再度強調し、専利の実施許諾が進歩性の有無を判断する際の商業上の成功等の副次的な判断要因になれるかについても論じた。具体的に言えば、知的財産及び商事裁判所が一回目の差し戻し審で「実施許諾契約の締結は商業上の行為に過ぎず、その背後には考慮すべき要因が多々ある」とし、専利の実施許諾ができたのは専利の技術的特徴によるものであるとの判断を否認したのに対し、最高行政裁判所は、以前の110年度上字第597号判決を引用し、以前に最高行政裁判所が示した専利権者が提出した証拠について充分に調査するべきとの判断に知的財産及び商事裁判所が依拠しておらず、下級裁判所が再度判決を下す際には最高行政裁判所が判決を破棄した理由を判断の基礎としなければならないという行政訴訟法の規定に違反したと指摘した。それと同時に、最高行政裁判所は、先行技術に基づいてイノベーションや研究開発を行うことを最も強く動機付けられるのは競合同業者であるため、多数の競合同業者との実施許諾契約が締結され、且つライセンス料が支払われた場合、専利が従来技術より優れて進歩性があることを証明できる可能性があると強調し、この点について、許諾の動機や契約の内容を考慮するほか、「被許諾者が積極的に許諾を要請したか、許諾の目的物が単一の専利か複数の専利か、許諾期間及び範囲がどれほどか、ライセンス料の多寡、被許諾者の許諾を受ける動機が何か(例えば、専利の技術的特徴を実施したいのか、ただ単に専利侵害訴訟の莫大な費用を避けたいのか、専利が業界において長期間存在した課題を解決したためなのか、それともその他商業的要因があるのか)、被許諾者における専利の実施状況」等を考慮しなければならないとした。
上記の事件の民事訴訟と行政訴訟における二回目の差し戻し審の結果がどうなるかは今後の注目を要するが、専利の進歩性について争う訴訟の当事者なら、前記の最高裁判所、及び最高行政裁判所が示した、当業者の技術レベル、主要引例等に関する見解を参考にすることができるのであろう。特に、専利権者が専利の実施許諾をした実績がある場合、最高行政裁判所の113年度上字第132号判決の判決理由を参考にし、その専利発明に関して予期せぬ成果の達成、長期間存在した課題の解決、技術的偏見の克服、商業上の成功の獲得等の副次的な判断要因があると主張し、進歩性判断に有利な証拠を提出するとよいと思われる。
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