台湾商標法の規定によると、正当な事由がなく3年以上不使用又は継続して使用していない場合、登録商標が取り消される可能性がある1。
登録商標が取り消される状況に直面した時、商標権者は過去3年間の使用証拠を添えて応答することができる。その使用証拠は、商標が実際に使用されていることを証明するに足り、一般的な商取引の習慣に合致していなければならない2。
台湾知的財産局(以下、「知財局」)が公布した「登録商標使用の注意事項(中国語:「註冊商標使用之注意事項」)」によると、登録商標の使用は、少なくとも次の三点に合致しなければならない。
①使用者の主観において、販売目的で商標を使用している。
②客観的に見て、関連需要者がそれを商標であると認識するに足る使用である。
③商標を使用する行為がある。
一方、商標登録の属地主義に基づき、商標権の使用と排除の法的効力は台湾内のみに及ぶとされている。この為、商標登録後は原則として、商標権者(又はライセンシー)が台湾で登録商標を指定商品又は役務に使用したかで判断される3。
台湾で登録商標が使用されているか否か、特に商標を役務に指定使用する商標権者が、海外のみで役務を提供している場合、どのようにすれば台湾で商標を使用していると認められるのだろうか。
これについて、先般の知的財産及び商事裁判所(以下、「知財商裁」)の判決を参考にすることができる。(知財商裁・2023年度行商訴字第14号、判決日:2024年3月29日)
係争台湾商標登録00104570号「CROWN」商標は、第42類のホテル・レストラン等の役務の提供を指定している。商標権者はオーストラリア企業であり、台湾では未だホテル・レストラン等の役務の提供を行っていない。
本件行政訴訟の原告は、商標権者自身が台湾で係争商標を使用していない上、台湾で第三者に権利を許諾する形で係争商標を使用する行為をしてもいないとして、商標権の不使用取消を申し立てた。知的財産局は取消の処分を下し、その後、係争商標権者は訴願を提起し、さらに次の使用証拠を提出した。
- 商標権者と台湾の旅行会社が締結した、台湾人旅行者がオーストラリア旅行へ行く際のホテル宿泊などの役務を提供する提携契約書、並びに当該旅行会社の公式サイトにおける「CROWN PLAZA又はJUPITERホテルのビュッフェを特別にご用意、あなたの食欲を満足させます!」等の内容の、オーストラリア観光の特色紹介。
- 台湾消費者が「Tripadvisor」及び「ezTravel易遊網」のホテル予約サイトにて商標権者のクラウン タワーズ メルボルン(Crown Towers Melbourne)の宿泊予約やクチコミの投稿をした記録。
訴願決定機関は審理を経て、商標権者が係争登録商標を使用していたと認定した。
そして、原告はこれを不服として、行政訴訟を提起した。知財商裁は商標権者が提出した証拠を審査した後、次のように認めた。
[前記証拠資料によると、商標権者は台湾の旅行会社や宿泊予約サイトを介して、商標権者のオーストラリアのホテル「CROWN」の役務の提供を宣伝し、台湾の需要者にオーストラリアへ赴くことと消費を促した。
商標権者は台湾において、役務の拠点を設けておらず、ホテルの経営等の役務を提供していなかった。
しかし、台湾の需要者はまず商標権者と提携している台湾の旅行会社や宿泊予約サイトでその役務を予約し、その後に海外へ赴いてそのホテルの役務を利用することができる。このことから、商標権者が提供している係争商標のホテルの役務と取引の一部が台湾で行われ、台湾需要者が台湾で係争商標のものと分かる役務の取引をしていると認めることができる。
係争商標は、台湾でその役務の市場や販売ルートの開拓・創造をするという経済的意義を備えているため、商標の属地主義精神に合致し、係争商標をホテル等の役務の提供に使用していることは、商標法で規定の商標の実際の使用に当たる。]
これにより、知財商裁は訴願決定を維持し、原告の訴えを棄却した。
注目に値することは、訴願決定機関が本件取消事案を審理している時に、かつて同様に海外のみで役務を提供する「東急」商標登録取消行政訴訟4と比較したことである。
「東急」商標は「百貨店」等の役務の提供を指定していたが、商標権者は台湾でこれらの役務の提供・経営をしていなかった。
訴願決定機関は、本件について、次のように認めた。
[「東急」の商標権者は台湾で「百貨店」の役務の提供・経営を提供していない上、需要者が台湾で「東急」商標が指定する「百貨店」の役務を利用したり、何らかの一部の取引行為が台湾で行われたりしたことを証明することができなかった。一方、本件係争商標「CROWN」は、ホテル等の役務に使用することを指定しており、需要者が訴願請求人(訳注:商標権者)と提携する台湾の旅行会社又はホテル宿泊サイトを介して当該役務の予約をすることができ、その後に海外へ赴き当該ホテル等の役務を利用することができる。両者の状況は異なり、そのまま援引することはできない。]
「東急」商標と本件「CROWN」商標の登録取消行政訴訟の判決を見ると、役務を指定使用する商標権者が、海外のみで役務を提供している場合、役務提供の取引過程の一部が台湾で行われている使用証拠を用意し、当該登録商標が台湾においてその役務の市場や販売ルートを開拓・創造する経済的意義を備えることを証明し、商標法の属地主義精神に合致させる必要がある。もし、台湾の需要者に対する販売資料のみで、台湾で役務や取引行為の一部をしていなければ、商標を実際に使用したとは認められないことになる。
1 商標法63条1項2号。
2 商標法67条3項、商標法57条3項。
3 登録商標使用注意事項2及び3.4。
4 知財商裁109年(2020年)度行商訴字第104号「東急」商標登録取消事案の行政判決。本件については、下記URLの弊所レポートをご参照ください。
日本語版:https://www.saint-island.com.tw/JP/Knowledge/Knowledge_Info.aspx?IT=Know_1_4&CID=629&ID=2146