台湾における専利無効審判の透明性及び公開性をより向上し、双方の当事者が十分に意見を表明する機会を得ることができるようにするとともに、当事者のその後の行政救済の手続簡素化を目指して、台湾知的財産局(以下、単に「知的財産局」)は、2018年3月30日に「専利無効審判ヒアリング(口頭審理)作業方案(ガイドライン)」の実施を発表した。これに関しては、弊所でも、2018年6月のニュースレターにて紹介し、また同年11月のIPレポートにて実際に参加した経験をお伝えさせて頂いた。この度、知的財産局は、これまで30回以上行ったヒアリングの実施経験および関連業界からのフィードバックに基づき、関連規定をさらに改善するため、2024年5月10日に改正草案を発表し、この改正草案は同年6月11日に施行された。この度の改正の主な方向を以下にご紹介する。
(一) 専利無効審判ヒアリング作業方案」から「専利無効審判ヒアリング作業要領」に名称を変更。
(二 ) ヒアリング前の準備機能を強化する。例として、争点の整理と簡略化を図り、係争無効審判における訂正事項を明らかにし、またヒアリングに際して攻防の要点を先に協議し、この協議の内容に当事者が拘束されることになることを規定。
上記の規定に基づけば、一旦ヒアリング協議が作成されると、当事者は、協議外の新たな争点あるいは新たな証拠の提出について、制限を受ける可能性がある。なお、現行の専利法第73条、第74条、および無効審判審理基準の関連規定には無効審判の請求人が理由または証拠を補充できる期間または特許権者が訂正を行うことができる期間も規定されている。これらの規定がヒアリング協議の拘束力といかに影響し合うか、今後の成り行きに注目したい。
(三) ヒアリングの進行役が、事実、法律、証拠に関する争点に関し、心証を適度に開示することができることを明文化。
これは、「裁判長または受命裁判官は、事件の法律関係について、当事者に対して争点を明確に伝えなければならないと共に、その法律上の見解を適時表明し、心証を適度に開示することができる。」とする台湾の知的財産案件審理法第29条第2項の規定、および、「裁判所が必要と認めるときは、技術審査官が作成した報告書の全部又は一部の内容を公開することができる。」とする同法第6条第3項の規定が参考にされた。このことから、台湾における各レベルの特許紛争解決手続の枠組みは、公開性、透明性だけではなく、当事者の手続上の主体性の確保を目指す方向にも向けられていることがわかる。
(四) 当事者、利害関係者、証人、鑑定人、またはその代理人がヒアリングに自ら出頭できない場合、進行役はその職権により、または申請により、「リモート」方式を採用することができ、これによってもヒアリングに出頭したものとみなされる。
ポストコロナ時代にあってはリモート会議が一般的になりつつあり、「リモート」方式の採用により、実際にヒアリングの場に出向く必要がなくなることから、特に国外の当事者のニーズに応えることができるものと思われる。但し、「リモート」方式によっても依然として実体的な場を設けてヒアリングを行うことが前提条件となるかどうかについては、今後の観察が待たれる。
(五) 一方の当事者が出頭しなかった場合にも他方の当事者の申請によりヒアリングが実施され得ることを明文化。ただし、出頭しなかった当事者が、ヒアリングの適法な通知を相当な期間内に受けていなかったまたは天災その他の正当な理由により出頭できなかった場合や、出頭した当事者が、知的財産局がその職権によって調査すべき事項について必要な証明を行うことができなかったまたは提出した理由、事実、証拠につき相当な期間内に他方の当事者に通知されなかった場合は、別にヒアリングの日時を定めるべきであるとされている。
(六) ヒアリングの記録は、質疑応答の形で要旨を記載することができ、また録音や録画により補足して内容を簡略化することができる。
上記の改正内容は、過去の実施経験および関連業界からのフィードバックおよび希望を反映したものが主であり、ヒアリング作業の更なる改善と審査結果の信頼性向上を期すことができるものと思われる。弊所としても、その展開を注視し、適時にレポートをお届けする所存である。