2024年5月8日、台湾の経済部訴願委員会(以下、「訴願委員会」)は、携帯電話用ケースを販売する事業者「圓一國際有限会社」(以下、「圓一社」)が提起した訴願(案件番号:經法字第11317301960号)において、圓一社が出願した第2268370号商標(以下、「係争商標」、下記イラストの通り)の構成図形は、あくまで商品の用途を説明した標示に過ぎず、識別力がないと認定した。そして、知的財産局(以下、「知財局」)が下した異議成立処分に誤りはないとして、圓一社の訴願を棄却した。

圓一社は、2022年6月10日に係争商標を登録出願し、2022年12月16日に登録が認められた。係争商標は、第9類の商品を指定しており、携帯電話用ケース、モバイルバッテリー、携帯電話用カバーなどの商品が含まれていた。その後、係争商標は商標法第29条第1項第1号に違反するとして、異議申立人「愛進化科技株式会社」が2023年2月6日付けで係争商標に対する異議を申し立てた。知財局は、2023年12月19日付けで異議成立の処分を下し、圓一社はその処分を不服として、訴願を提起した。
訴願委員会は知財局の意見に同意し、下記のように述べた。
- 商標法第29条第1項第1号により、商標が、指定商品又は指定役務の品質、用途、原料、産地若しくは関連する特性を記述した表示のみからなるときは、商標登録を受けることができない。
- 係争商標は、黒地のスクエアの中に、白色の円枠とその右の横向きの太字線を組み合わせたもののみで構成されている。本件の証拠によると、第三者・アメリカのアップル社は、係争商標が登録される前の2020年に、すでにiPhone12シリーズのスマートフォンと組み合わせて使える「MagSafe」ワイヤレス充電技術を発表しており、その技術は、デバイス内蔵のマグネットとセンサー(コイル)を使って、iPhoneを充電する時に、自動的に充電器を吸着し、充電器とiPhoneが確実に繋がるようにするとともに、充電速度を上げることができるものである。また、アップル社は、「MagSafe」に関連するスマートフォン用ケースや充電器などの商品の販売もはじめており、それらの商品は、いずれも丸い円枠の下に縦向きで長尺の楕円形を配置し、消費者にスマートフォンとワイヤレス充電器と合わせる位置を示し、スマートフォンを「MagSafe」充電器とより精確にペアリングができるようにしており、位置ズレによる充電効率の低下を防ぐことができる。
- 本件の証拠によると、係争商標が登録される前に、すでに他のスマートフォン用アクセサリ製造業者が、「MagSafe」ワイヤレス充電技術に対応するスマートフォン用ケースや車用充電器などの商品を販売しており、それらの製品はどれも上記と似た図形を標示している。したがって、圓一社が、係争商標図形で「携帯電話用ケース、モバイルバッテリー、携帯電話用カバー」を指定商品として登録出願したことは、消費者にそれらの指定商品に「MagSafe」ワイヤレス充電器やその関連商品と合わせて使用可能である印象しか与えず、係争商標図形は、ただ「MagSafe」ワイヤレス充電器やその関連商品とペアリングのための位置や方位表示であるにすぎないと認定する。係争商標図形は、出所を識別する標示ではなく、商品の用途あるいは関連する特性を記述した表示のみからなるものであるので、商標法第29条第1項第1号に基づき、係争商標の登録を受けることができない。
圓一社は、係争商標図形は自身の会社名「圓」、「一」に由来したものと弁解したが、訴願委員会は、商標の識別力の有無を判断するときに、商標図形設計のコンセプトは考慮すべき要素でなく、個々の事案における事実や証拠により、商標と指定商品又は役務との関連性、競合企業による使用状況、出願人による使用実態、取引状況などの要素を総合的に判断すべきであると認定し、圓一社の弁解を採用しなかった。
この案件は、出願商標に識別力があるかについて証明する際、出願人の主観的な商標図形設計コンセプトや発想ではなく、商標が消費者に与える印象、競合企業が使用しているかどうか、出願人の使用実態などの客観的な証拠を中心にして、出願商標に関連する使用証拠を収集・提出するほうが、より有利な認定を取得できる傾向があることを示している。
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